日本社会が高齢化する中、各地の刑務所では「老人ホーム化」が進んでいる。懲役刑で科せられる刑務作業についていけない高齢受刑者が増加し、「作業」の名の下でリハビリに取り組まざるを得ないのだ。約1500人が服役する国内最大の府中刑務所(東京都府中市)の現状を取材した。(宮本隆康)

◆最高齢は94歳、2割が65歳以上
 白髪の交じった丸刈りの高齢男性が、数メートル先の台に向けてお手玉を投げていた。自転車型のトレーニングマシンを黙々とこぎ続ける別の高齢男性もいる。「養護特化工場」と呼ばれる一室では、70~80代の数人が「機能向上作業」に励んでいた。

 体力や認知機能の低下した高齢受刑者の増加を受けて、2020年度から介護福祉士や作業療法士の職員を採用。木工や金属加工などの通常の刑務作業が難しい高齢受刑者向けに開設したのが養護特化工場だ。実態はリハビリだが、刑務作業は現在の刑法では義務のため、「機能向上作業」と称している。

法務省の犯罪白書は、65歳以上の受刑者について「顕著な上昇傾向」と指摘する。受刑者全体や他の年代が減る中、特に70歳以上は増加傾向にある。
 矯正統計によると、2022年に新たに収容された受刑者は1万4460人で、約20年前の03年から半分以下になった。一方、65歳以上は14%の2025人で、03年の4.3%から3倍以上に増えている。特に70歳以上の増加が顕著だ。犯罪の内訳では窃盗が最も多い。

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