ビッグモーターに293万円支払い命令 水没車を「事故歴なし」と販売 前橋地裁太田支部で判決

中古車販売大手のビッグモーター(東京)が、事故歴がないと説明しながら水没した中古車を販売したとして、群馬県館林市の医薬品販売会社がビッグモーターを相手に、車の販売代金など350万円の返還を求めた民事訴訟の判決言い渡しが20日、前橋地裁太田支部であり、沢井真一裁判官は「転売時の注意義務の怠りが著しい」として、車の販売代金293万円の支払いを命じた。

 判決によると、原告企業の男性社長(63)は2019年、ビッグモーター館林店(館林市)を訪れ、店のパソコンを使って中古の乗用車1台を選び、293万円で購入した。約1年8カ月後に追突事故に遭い、別の板金業者で車を修理した際、変速機などが破損していることが発覚。正規ディーラーに調査を依頼し、過去に水没した痕跡があることが判明した。

 ビッグモーターが車を回収して調べ、水没した痕跡があることを認めたが、男性が保証サービスを使った無償修理を求めると、同社は水没時期や不具合を調べること自体が有償になると説明。相場である30万円程度で車を下取りに出し、店でまた別の車を買うよう提案した。初めに水没車を買い取った系列店への調査にも応じなかった。

 沢井裁判官は、ビッグモーター側が以前の所有者から車を買い取った時点で、備え付けの書類に不審点があり「慎重に整備状況や修復歴を確認する必要性が高かった」と認定。自社で扱う車は全て無事故車で、大手事業者で信頼性が高いと宣伝していたことを考えると、水没歴や車内の様子を詳細に調べるべきなのに怠ったと指摘し、男性との売買契約は無効だとした。

 男性は21年9月に提訴していた。上毛新聞の取材に「望んだ通りの判決。泣き寝入りをする人がいなくなってほしいと思った。彼らの一連の行いは、刑事処分されてもいいようなことではないか」と憤った。ビッグモーターは「個別の案件に関して回答を控える」とした。

https://www.jomo-news.co.jp/articles/-/347508