西岐波小6年の中村君、史上最年少のふぐ処理師に【宇部】

 今月から日本海でのフグはえ縄漁が解禁となり、県の新たな観光キャッチフレーズに「おいでませ ふくの国、山口」が採用されるなど、改めてフグが注目を集めている。そんな中、この夏に全国的な話題となったのが、史上最年少の11歳で県のふぐ処理師試験に合格した西岐波小6年の中村智弥君だ。

 猛毒を持つフグを調理するには都道府県ごとに実施される試験に合格しなければならない。山口県ではおととしまで3年以上の実務経験がなければ受験できなかったが、昨年4月に制限が撤廃され誰でも受験可能になった。

 両親、妹と暮らしていた中村君は小学4年の時に「家族においしい物を食べさせたい」と料理人になる夢を抱いた。近所で料理店を経営する親戚の西村友和さんに相談したところ、ふぐ処理師の試験は小学生でも受けられるようになると教えられた。

 それから1年間、西村さんの指導を受け、フグだけでなくイサキなど骨の硬い魚でさばき方を練習。腕力の弱さを補うため、西村さんのアイデアで包丁の背をゴム製ハンマーでたたいて骨を断つ独自の技も習得した。
 
 食品衛生法やフグに関する知識を問う学科試験には、過去に出題された問題を毎日100問ずつ解いて臨んだ。

 初挑戦は昨年7月。学科試験は合格したが、フグ1匹を解体処理し、毒のある部分と毒の無い部分に分ける実技試験で、制限時間の20分以内に完了することができず不合格。緊張のあまりハンマーを試験会場に持ち込むのを忘れたためだ。

 「次は絶対に合格する」との決意に西村さんも応え、1年間に30匹以上のフグをさばくなどの特訓を続けた。学科試験は一度合格すれば、2年間は免除される。

 今年7月12日、山口市秋穂二島のやまぐち総合教育支援センターで行われた実技試験では、ハンマーを上手に使いこなして手早く作業を進め、苦手としていた目玉の除去と、お尻の筋肉と腸の引き剥がしも無事にクリア。20分以内にさばき切り、調理器具の洗浄も済ませた。

 8月1日に大方の予想通り合格が発表され、22日に第7391号のふぐ処理師として免許証が県から交付された。試験の数時間後に2人目の妹が生まれるおめでたも重なった。

 中村君は、来春進学する中学やその先の高校では「普通の学校生活を送りたい」としながら「将来はフグを完璧に調理できるようになって、いろいろな人に食べてもらいたい」と抱負を語った。
https://news.yahoo.co.jp/articles/2d81bd094a5d489bacde9cb908aa5a241d59b03c