全身が真っ白な羽で覆われたハシボソガラスが昨年12月、保護から29年にわたる大往生を遂げた。先天的にメラニン色素を持たず色が白い「アルビノ」だった。平均寿命が5年ほどと短いアルビノでは極めて異例で、国内最高齢だったとみられる。【内田帆ノ佳】

「あと何年生きるか楽しみだった」。鳥類研究家でアルビノ個体の育ての親である風間辰夫さん(88)はそう語る。昨年4月には、ケガや病気をした野生鳥獣を保護する「新潟県愛鳥センター紫雲寺さえずりの里」(新発田市)の飼育舎で元気に過ごしていた。それが風間さんが最後に見た姿だった。

 ハシボソガラスは体長50センチほどで、日本各地に生息する。生まれつき体の色素が少ない遺伝子疾患であるアルビノ個体は珍しく、風間さんによると発生確率は10万分の1ほど。ただ聖籠町では86年から8年連続でハシボソガラスのアルビノ個体が発見され、国内初の事例となった歴史がある。

風間さんとの出会いは1993年5月下旬。聖籠町大夫興野で、アカマツの大木の巣から落下していた白いカラスの幼鳥を地元の農家の人が発見。当時、同センターに勤めていた風間さんが「野生では到底生きられない」と考え、保護したという。

 黒色のハシボソガラスと比べて、白いカラスは視力が弱く、暑さが苦手。さらに羽毛が白色で目立つため外敵に狙われやすく、野生ではほとんど生きることができないという。保護したカラスは、目が赤く、羽や足、爪は白色で完全なアルビノ個体だった。

 飼育下でも平均寿命は5年ほど。鳥類研究家らの間ではアルビノは「短命」というのが常識だった。6倍近く生きた理由について、風間さんは「当然、私の管理があったからこそ長生きした」と誇らしげだ。

 そんな風間さんの飼育法にはこだわりが詰まっていた。日の当たらない涼しい場所に飼育舎を設置。餌は栄養価の高い市販のドッグフードを使用。一般的に鳥は水を必要としないが、こまめに与えた。弱視のため、水飲み場や添え木の配置替えはしない。また、単独ではなく群れを好むため、両隣の飼育舎にはワシやタカなど異なる種類の鳥を飼ったという。

https://mainichi.jp/articles/20230825/k00/00m/040/092000c

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