岸田文雄首相が9月26日、長崎県平戸市の黒田成彦市長らと首相官邸で面会し、九州名産のあご(トビウオ)を使ったかまぼこを試食して「柔らかく、芳醇(ほうじゅん)だ」と笑顔を見せた。

 歴代の首相経験者は、全国各地の特産品の生産者などと対面し、名物を味わって評価するため、「食リポ」の力が求められることも多い。

 これまで、岸田首相が何度も使ってきたのは「歯ごたえ」という表現だ。

 2021年11月25日、奈良県産の柿を宣伝する「奈良の柿PRレディ」から、奈良名産の柿を贈られた岸田首相は「歯ごたえがあって新鮮」と絶賛。

 また2022年9月5日、JA全農とっとりから贈呈された鳥取県特産のナシ「二十世紀」と「新甘泉(しんかんせん)」を味わった際にも「慣れ親しんだ懐かしい味で、歯ごたえが大変すばらしい」と、ここでも「歯ごたえ」を強調した。

 さらに2023年8月30日、海洋放出された処理水の安全性をアピールするため、福島県産の海産物を食べた際にも「歯ごたえが違う」と、またも同じフレーズを使った。

 最近では「増税メガネ」とも揶揄される岸田首相。首相就任初期には記者の言葉もメモするなど「聞く力」を評価されてきたが、「食リポ力」にはまだまだ課題が残る格好だ。

 同じように、「ジューシー」のフレーズを多用していたのは、安倍晋三元首相だ。

 2018年6月、茨城県鉾田市からメロンを贈呈されて安倍元首相は「非常にジューシーですね。たいへん癒やされた」とコメント。

 また同年8月、宮崎県西都市の農家でキュウリを試食した際には、首相官邸のInstagramで「朝獲(ど)れキュウリをいただきました。ほんとに、うまい! みずみずしくて、ジューシー、最高の味でした」と語り、「#ジューシー」のハッシュタグまであった。

 さらには、ビーフジャーキーまで「ジューシー」と表現したことも。

 2018年12月21日の朝日新聞では、グルメリポーターとして知られる彦摩呂が「食感や見た目の感想をうまく取り込んでみて」と、首相にアドバイス。「うわー、赤いー!」など、あえて見た目の感想を伝えるのも効果的、との助言を、記事を通じて送っていた。

 それでも、首相辞任後の2021年5月18日のX(旧Twitter)で、安倍元首相は宮崎の完熟マンゴーに「もちろんジューシー。さすが日本が誇る最高級品です」と、またも「ジューシー」を投稿。

 ひとつの言い方にこだわったのは、一度は体調不良で辞任した首相の座に返り咲いた「あきらめない」気持ちを、食リポでも発揮したともいえるだろう。

https://news.yahoo.co.jp/articles/acbab26ff4a13ccadd8c8dafec111c4d98cdef71