ウクライナ軍は、運用する英国製チャレンジャー2戦車に追加の防護を施した。前面下部の「グラシ」と呼ばれる傾斜装甲に、新たに装甲板を取り付けた。これは明らかに、重量69トン・乗員4人のこの戦車のよく知られた弱点を、ロシア軍のコルネット対戦車ミサイルのような2段式のタンデム弾頭から守るためのものだ。

チャレンジャー2の追加装甲は、最近SNSに投稿された動画に映っていた。しかし、チャレンジャー2のもうひとつの弱点をコルネットによって狙われた場合、この装備は無意味なものになってしまう。9月4日ごろ、ロシア軍によってチャレンジャー2が初めて仕留められた時には、まさにこの弱点を突かれたようだ。

第82旅団を中心とする部隊は8月下旬にロボティネを解放したあと、その南東にある集落ベルボベ方面に向かい、次の目標であるロシア軍防御拠点を攻撃した。チャレンジャー2はロボティネ周辺の陣地からベルボベ方面に移動する途中で、地雷を踏んでしまったようだ。

地雷の爆発で動けなくなったチャレンジャー2は、ロシア軍の格好の目標になった。乗員たちが緊急脱出してからほどなくして、ロシア軍側からコルネットが撃ち込まれた。

全長1.2mのコルネットは、重量4.6kgのタンデム弾頭を搭載する。普通は1段目の弾頭が車両外側の装甲に穴を開け、2番目の弾頭は車両の内側で爆発する。

もしこのチャレンジャー2のグラシが追加装甲で補強されていて、そこにコルネットが当たっていれば、この戦車は生き延びられていたかもしれない。だが、ロシア軍のコルネット運用部隊はこの時の攻撃では、車両の上面を狙う「トップアタック」と呼ばれるモードを使ったもようだ。タンデム弾頭は、こちらも装甲が薄く追加装甲も設けられていない砲塔のやや上方で爆発した。

この攻撃によってチャレンジャー2で火災が起こり、特殊な容器に入れられていた弾薬が「クックオフ」(周囲の熱による爆発)を起こしたとみられる。これらの容器は水で満たされ、壊滅的な二次爆発を防ぐようになっているが、今回は防げず、爆発が生じて砲塔が車体の上でねじれている。

砲塔の下に弾薬が乾燥状態で置かれていることの多い旧ソ連型戦車では、こうした爆発があった場合、砲塔が丸ごと吹き飛ぶことが多い。この戦車ではそうはならなかったものの、チャレンジャー2にとって最悪のシナリオになったのは間違いない。急所を正確に、それも2度も敵に突かれたのだ。まず地雷で装軌(キャタピラー)をやられて走行不能になり、続いて防御が最小限しかない砲塔上面をミサイルで攻撃された。

これでロシア軍はチャレンジャー2の仕留め方がわかった。動きを封じた上で、上方からたたくのだ。

とはいえ、学習したのはロシア側だけではない。ウクライナ側はすでに、チャレンジャー2の弱点のひとつはグラシだとしっかり理解し、手当てをした。次は砲塔の上面についてもそうすべきだ。とくに、動けず、隠れることもできなくなった場合、この弱点が露わになってしまう。

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