会見では、東山さんと森光子さんとの関係や、藤島ジュリー景子前社長の遺産額を問うような発言もあった。真面目な顔
で性加害問題を追及するふりをしながら、実際は下世話な傍観者でしかない。そんな一部メディアの性質を浮き彫りにする
会見でもあった。

 ジャニーズ問題はどこに着地するのだろう。性加害が絶対にアウトだとして、類似の事案は他の事務所には皆無だったの
か。現代の常識で、昭和・平成の出来事をどこまで裁いていいのか。推定無罪の原則を蔑ろにして、私刑のような糾弾がま
かり通っていいのか。自分もうわさは知っていたという後ろめたさが転じて、過激な批判につながっていないか(統一教会
問題にも通じる)。

 ジャニーズ事務所をたたくだけでは、日本における性被害の問題は解決しない。今回の一件で、男性も被害者になり得る
ことが広く周知された。性別を問わず性被害を訴えやすい環境を作ることの方が、人権侵害までして他人の性被害を聞き出
すことよりも重要だろう。

古市憲寿(ふるいち・のりとし)
1985(昭和60)年東京都生まれ。社会学者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員。日本学術振興会「育志賞」受賞。若者の生態
を的確に描出した『絶望の国の幸福な若者たち』で注目され、メディアでも活躍。他の著書に『誰の味方でもありません』
『平成くん、さようなら』『絶対に挫折しない日本史』など。
https://news.yahoo.co.jp/articles/524758be70268920df77502c6a48af45bbd96b6b