
「和食とあわない」学校給食に牛乳不要論 コスト高も議論の背景
9/30(土) 10:02
9月中旬、和歌山市で提供された和食の給食。筑前煮、ゆかりあえと米飯に牛乳が付く
学校給食の「牛乳」が和歌山市で議論になっている。乳製品高騰を背景に市教育委員から「減らしては?」と提案があったためだ。かつて新潟県三条市では「米飯と牛乳の相性」を理由に一時、牛乳が給食メニューから外れたことも。折に触れ持ち上がる学校給食の牛乳存廃論。和歌山での帰趨(きすう)はいかにー。
「和食のときは牛乳の提供をやめてはどうか」。和歌山市教育委員会などが8月に開いた市総合教育会議で、ある教育委員がこう切り出した。
古くは脱脂粉乳、さらに三角パックなど、一貫して給食の定番メニューであり続ける牛乳。同市では週3回の和食メニューのときを含め、給食時に小学生約1万6千人にそれぞれ紙パック入り200ミリリットルを提供する。会議では「乳製品の高騰で給食費に影響が出ている」との意見も上がった。
総務省の小売物価統計調査によると、牛乳1リットルのパックは、和歌山市で昨年2月に196円だったが、ロシアによるウクライナ侵略や円安、外国産の牧草や飼料の値上がりなどが影響し、全国的に高騰。今年8月には和歌山市で246円にまで上がった。
和歌山市は食材費の値上がりを受け、令和4年度1学期から給食費に1人1食20円を公費で上乗せ。5年度2学期からは牛乳高騰のあおりで30円にまで拡大した。現在の牛乳価格は1パック70円で、1人分の給食費282円(自校調理)、同275円(共同調理)の約25%を占める。
そもそも学校給食での牛乳の提供は、法令に根拠がある。学校給食法施行規則は、完全給食の内容として「パンまたは米飯、ミルクおよびおかずである給食」と定義、牛乳を必須と位置付けている。
文部科学省の3年度調査では、学校給食を実施している国公私立学校は全国2万9614校(実施率95・6%)。このうち完全給食の実施率は94・3%に上る。給食内容の変更には都道府県教委への届け出が必要とされるという。
ここまで牛乳が重視されるのは、牛乳が成長期の児童生徒の主要なカルシウム補給源になっているため。文科省によると、学校給食摂取基準では、給食1回でのカルシウム摂取基準値を小学校低学年で290ミリグラム、中学生で450ミリグラムと設定。和歌山市教委は「給食での牛乳提供をやめた場合、他の食材で補うことは難しい」と話す。
一方で「米飯に牛乳は合わない」との意見も根強い。新潟県三条市では「米飯との相性がよくなく、和食の文化を壊す」として、平成26年12月~27年3月、試行的に牛乳の提供を休止した。しかし栄養価が高いことを考慮して同年4月には提供を再開した経緯がある。
同市教委は「最終的には子供たちに給食を自由に楽しんでもらおうと判断した」と振り返る。
和歌山市の子供はどう感じているだろうか。9月中旬、和歌山市立伏虎(ふっこ)義務教育学校での給食には和食メニューが並んだ。この日は「筑前煮」「ゆかりあえ」に牛乳が添えられた。6年3組の男児(12)は「和食が好き。牛乳も好き」と牛乳をお茶代わりに飲み、屈託がなかった。(永山裕司)
https://news.yahoo.co.jp/articles/9fbc2ebfc1cb607c2521238bbcc4478ca9f73e6c