ウクライナはロシアが占領するクリミアへの攻撃を強めている。開始から4カ月経った反転攻勢では東部や南部の戦線でなかなか前進できずにいるが、ミサイルやドローンを活用したクリミアへの攻撃では敵軍の兵器や拠点、補給線を破壊している。
クリミアを守っていた高度防空システムを破壊したことを契機に、ウクライナは巡航ミサイルやドローンでロシアの艦船や黒海艦隊司令部を攻撃。レーダー拠点として使用されていた黒海の海洋プラットフォームも奪還した。
この結果、ロシア艦隊の動きはさらに制限され、同国の戦争能力はそがれていると、非公表の内容を話しているとして匿名を要請した欧州当局者は述べた。
この当局者によると、これらの作戦はロシアの補給線や兵たん、攻撃作戦遂行能力を標的とする全般的な戦略の一環だ。激しさを増す攻撃はロシアの軍事能力をじわじわ低下させるウクライナの作戦が前進していることを示すほか、2014年にロシアによって違法に併合されたクリミアを取り返すという戦略的な目標も改めて意識させている。
ただ、これがウクライナに年内の決定的な戦況打開をもたらす可能性は大きくないと、この当局者はくぎを刺した。
ウクライナ国立戦略研究所の研究員、ミコラ・ビエリエスコフ氏は「現時点では、これらのプロセスは並行して進んでいる。兵たん拠点としてのクリミアが弱体化すれば、ウクライナは本土のロシア軍にもっと対処できるようになる」と述べた。
ウクライナはロシア国内のインフラや補給線、空軍力も標的にしている。29日にはロシア西部の5つの町をドローンで攻撃し、電力を喪失させた。ウクライナのエネルギー施設を狙い打ちにしたロシアの戦術をやり返した格好だ。
戦争の大半を通じて、ロシアはクリミアへの攻撃をレッドラインだとし、攻撃があれば報復によるエスカレートを招くと示唆してきた。だが、ウクライナの攻撃が激化しその成功が増えている中でも、ロシアの脅しは実現していない。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-09-29/S1R8ZGT0AFB401