
大学生に広まる「バ畜」の実態 すべてをなげうってバイト漬けにさせる“雇い主”の巧妙な手口とは
10/18(水) 11:06
アルバイトにすべてを搾取される“バ畜”というワードが大学生の間で広がっている。写真はイメージ(GettyImages)
“バ畜”という言葉を聞いたことがあるだろうか? 会社のためにまるで家畜のようにがむしゃらに働かされている人を意味する“社畜”という言葉があるが、“バ畜”はそのアルバイト版。これが最近大学生たちの間で広まっているという。学業やプライベートをなげうってまでバイト漬けの日々を送る“バ畜”になってしまう事情と、その背景を取材した。
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「僕はバ畜だと思います」
大手家電量販店の携帯電話売り場でアルバイトをしている、大学3年生のユウタさん(仮名)は、力なくそう笑った。
ユウタさんはもともと、飲食店でのバイトを渡り歩いてきたが、どの店でも「給料が安いわりに仕事がハード」であることに嫌気が差していた。個人経営の居酒屋では、店長の代わりに1日中店番をするだけでなく、仕入れや売り上げの管理、ほかのバイトたちのシフト作成、クレーム対応までやらされた。
「責任を負うことが多くて、肉体的にも精神的にもきつかった。時給は1000~1100円なのに、なんでこんなことまでしないといけんのじゃって思ってました」
しかし、お金は稼がなければならない。ユウタさんは認知症の祖母の介護をしながら大学に通っており、生活費は全額、学費も半分は自分でまかなっている。プロを目指して音楽活動にも打ち込んでいるため、その費用もかかる。そこで、1500円の時給に魅かれて、今年7月から家電量販店でのバイトを始めた。
■会社と戦うのは労力がいる
だが、待っていたのは、こんなはずでは……という労働環境だった。
わずか1週間の研修を受けただけで“独り立ち”認定され、店頭で電話回線の契約や機種変更の対応に駆り出された。知識不足ゆえに失敗すると、耳元のインカムから「そうじゃねえから!」と叱責が飛んでくる。
一番困っているのは、なかなか休憩がとれないことだ。社員がおらずバイト2人だけで回す日は、次々やってくる客の対応に追われて現場を離れられず、朝9時から夜7時まで10時間ぶっとおしで働くことも。にもかかわらず、勤務記録上は1時間の休憩をとったことになっており、そのぶんの時給は出ないというから、労働基準法的に完全にアウトだ。
「職場は、一言でいえば“ブラック”に尽きますね。求人サイトではすごくホワイトそうに見えたのに、あとで調べたら、どの店舗でも求人を出していたっていう……。慢性的な人手不足の証拠ですよね。深く調べてから行動しないと痛い目を見るなって反省しました」
今は、シフトを詰めこまれそうになったら、予定があるとうそをつくようにしているが、それでも週4日は入らざるをえないという。
「最近はインフルエンサーがSNSで法律の知識を紹介したり、『会社を追及すれば勝てる!』と発信したりしていて、感化されている若い人もいるけど、社会の実情とはギャップがあると思うんです。会社と戦うのはすごく労力がいるし、法律の知識がすべて通用するかというと、そんなに甘くない」
■バイトがやめない方法をマニュアル化
しかし、理不尽な職場に疑問を抱きつつも、耐えしのんで出勤し続けてきた。ユウタさんの周りにもバ畜のごとき働き方をしている友人たちがいるが、「文句を言う子はあまりいない」という。
https://news.yahoo.co.jp/articles/e2b825e1dba148fa888d7dd2c74f3c8a1e4de77e