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「ミイラ便」は危険信号
~QOLにも影響する便秘~
便秘は、本来体の外に出すべき十分な量の便を排出できない状態を指し、すっきり感がなく、不快感を伴う。便秘の人に多く見られるのがコロコロした便や硬い便で、大腸に長くとどまったために水分が搾り取られ、ミイラ化した便(ミイラ便)だ。腸内環境に詳しい専門医は「便秘はストレスを招き、日常生活に支障が出ることもある。ミイラ便は危険信号だ」と話す
ミイラ便という名前は、工藤内科(福岡県)副院長の工藤あき医師(消化器内科)らが付けた。「ミイラを想像してほしい。乾燥し、干からびている。同様に便がカチカチに硬くなり、出しにくくなった状態だ。患者に対し、それをかみ砕いて表現しようとした」
便秘の経験がある人は多い。便秘が続くと「息まないと排便できずにお尻が痛くなる。ひどい場合には切れ痔(じ)になることもある」
便秘は、男性より女性の方がなりやすい。男性に比べて筋力が弱いためだ。
工藤医師は「3週間ほど様子を見ても、悪い状態が続くときには医療機関を受診した方がよいだろう」と勧める。特に、体重が減ったり、便に血が混じったりしているような場合は、大腸炎にかかっていたりすることもある。さらに悪くすると、大腸がんが隠れていたりするケースもあるので、消化器内科の専門医に診てもらった方が安心だ。
女性のがんの死亡数第1位は大腸がんで、増加傾向にある。さらに工藤医師は「食事の欧米化などが背景にあって、発症リスクが上昇しているのではないか」と言う。
「大腸劣化」対策委員会が、全国の60~80代の男女600人を対象に実施したインターネット調査(3月31日~4月2日)によると、「常に快便」が50%、「便秘気味」25%、「下痢気味」5%、「一定していない」20%―だった。快便の人と便秘気味の人では便の形状が異なる。便秘気味の人では、コロコロした便や硬い便、やや硬い便が7割近くを占めている。
腸内の状態はトイレにいる時間にも差があり、生活の質(QOL)にも影響する。快便の人がトイレにいる時間は1日平均約7分だったのに対し、便秘気味の人は約11.2分だった。1年(365日)に換算すると、便秘気味の人の方が1日長くトイレにいることになる。
腸の壁に圧力
硬い便が柔らかい腸の粘膜に圧力をかけることで、腸の壁が外側にへこみ、「憩室」という小さな部屋を作る。憩室自体が大きな悪さをすることは少ないが、炎症を起こしたり、病原菌に感染したりする場合がある。
「高齢者などに多いのは、排便寸前までいきながら出ずに便が腸内にとどまり、ミイラの成れの果てのようになってしまうことだ。これが腸の壁を傷つけ、潰瘍になることもある」
◇ストレスが大腸に影響
工藤内科の受診者には、若い時から便秘で悩んでいる女性も少なくない。仕事に追われ排便のタイミングを逃すことが続くと、便が長時間、腸内にとどまる。腸に水分が吸収されて便がミイラ化し、便秘になってしまう。
4人の子どもがいる50代の女性が工藤内科を受診。「子育てが一段落したので、やっとクリニックに来ることができた」と話した。忙しくて、便意を感じることがあまりなかったと言う。
工藤医師は「仕事や子育てなどでストレスを感じると緊張状態になり、自律神経がうまく働かない。それが大腸の働きにも影響する」と言い、「リラックスしていないと、トイレに行っても便が出ないことがある」と指摘する。
◇食事後に排便の習慣を
食事を取れば、反射的に排便しやすくなる。そのタイミングは朝食の後が最も良いが、その時間を取れない場合もあるだろう。そういうときは、夕食後にトイレに行く習慣を付けたい。
「排便がスムーズな状態と便秘を繰り返すことは多い。大腸の働きは活発になったり、低下したりするからだ。検査をして何も異常がないこともある。ただ、便秘がずっと続くようであれば、きっかけとなる病気が隠れている可能性がある」
全体的に便秘と下痢の状態を行き来するケースが多い。腸内環境の悪化は血流にも影響し、女性にとって気がかりな肌荒れにもつながりやすいという。