https://news.yahoo.co.jp/articles/68f03362101e595a7830a1fc1243efc8777f9e03
 完成したはずのトンネルが、ほぼ全てやり直しに――。
全国の公共工事でも異例の事態が和歌山県で起きている。
トンネル内壁のコンクリートの厚みが規定の10分の1しかないなど「張りぼて」であることが発覚したのだ。
トンネル整備は、南海トラフ地震による津波被災時などのアクセス確保が目的。受注業者の負担で工事がやり直されることになったが、使用開始は約2年遅れてしまう。

◇津波時に威力発揮するはずが…
施工不良が発覚したのは、同県那智勝浦、串本両町境の「八郎山トンネル」(全長711メートル)。
この地域の主要幹線道路・国道42号は、海岸近くを走っており、地震による津波被害が想定される。
このため、内陸部を通る県道に新たなトンネルを設けようと、県は2020年に一般競争入札を実施。浅川組(和歌山市)など2社による共同企業体が約20億円で受注した。
22年9月に完成して県に引き渡され、23年12月に使用開始予定だった。

ところが、別の業者が22年12月、照明設置のために天井に穴を開けると、内部に空洞があることが判明。
その後の県の調査で、本来30センチであるべき内壁コンクリートの厚みが3センチしかない部分があるほか、全体の約7割で空洞が見つかった。
風化や地震などによるひび割れでコンクリートが落下しやすくなるという。

事態はこれだけで収まらなかった。
内壁のコンクリートを剥がすなどして、トンネルを支えるアーチ状の鋼材(支保工(しほこう))を調べたところ、ほぼ全域で本来の位置に設置されていなかった。
その結果、内壁を全域で剥がし、約700本の全ての支保工を外して、掘削以外の工程をやり直すことが決まった。工事費用はすべて受注業者が負担する。