有為転変】第148回 国家はどんな人材を育てるのか
オーストラリアのモリソン政権が、新型コロナ後を見据え、続々と国内の制度を変更しつつある。その中で非常に興味深いのは、大学の学費を全面的に見直す計画が含まれていることだ。オーストラリアに将来必要とされる数学や農業などの科目の授業料を引き下げ、人文系の科目を逆に引き上げるというものだ。これはまさに「国が将来どんな人材を育てていくのか」という国づくりの方向を示すものと言える。

連邦政府が発表した2021年からの「教育制度改革」によると、例えば、学費が最も安くなる学生は数学や農業専攻の学生で、現在の年間9,698豪ドル(約71万円)から3,700豪ドルと約60%も安くなる。また、教育や看護、英語、臨床心理学を専攻する学生の学費は同3,700豪ドルと46%、エンジニアリングやサイエンスなども21%それぞれ安くなる。

これに対して逆に高くなるのは、人文学や社会・文化、コミュニケーション専攻で、学費は同1万4,500豪ドルと、113%も上昇。また法律や経済、経営、商業の学費も28%引き上げられることになる。文学部の学費が、医学部生の学費を上回ることもあるという。

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