初動に人災の要素もある――。防災研究の第一人者で、石川県の災害危機管理アドバイザーも務めてきた神戸大名誉教授の室崎益輝さん(79)は、
能登半島地震の初動対応の遅れを痛感しています。自戒の念もこめて、今、伝えたいこととは。

――6~7日に能登入りして、支援物資を届けて視察しました。

これから指摘することは、私の責任でもあります。県の災害危機管理アドバイザーを務めてきましたから。
やるせなさ、自戒もこめて、長年防災と復興支援に関わってきた一人として、誰かが言わなければ、言葉にしなければと。
今の段階で、声を上げなければと思いました。トップ、そして関わってきた私たちそれぞれが考えないといけません。

今回、すぐに現地入りしたかったのですが、交通事情や、なるべく立ち入りを避けて、というメッセージが強かったため、発災から5日後に珠洲市と能登島以外の全域をくまなく視察しました。
県庁、被災自治体、避難所などを凝縮して回りました。活動しているNPOにも接触しました。

初動対応の遅れがとても気になりました。

これまでの多くの大震災では、発災から2、3日後までに自衛隊が温かい食事やお風呂を被災された方々に提供してきました。

でも今回は遅れた。緊急消防援助隊の投入も小出しで、救命ニーズに追いついていない。
本来は「想定外」を念頭に、迅速に自衛隊、警察、消防を大量に派遣するべきでした。

被災状況の把握が直後にできなかったために、国や県のトップがこの震災を過小評価してしまったのではないでしょうか。
初動には人災の要素を感じます。

◆国や県のトップが、震災を過小評価した

避難所への水や食べ物、物資の搬入が遅れたのは、半島で道路が寸断されるなどした地理的要因もありますが、
被災地で起きていることを把握するシステムが機能しなかったことも要因です。
それがトップの判断を誤らせています。

迅速な初動体制の構築は、阪神・淡路大震災から数々の震災の教訓として積み重ねられ、受け継がれてきました。
それが今回はゼロになってしまっている印象を受けました。

災害対応の「基本」とは何か――。災害はみな異なるので難しい問題です。それでも、私たちはこの問いから逃げてはいけないように思います。
それは、被災者の命に関わるからです。

私は防災研究者として阪神・淡路大震災で被災も経験しました。その原点がある。

神戸では震度6以上の地震は起きていなかったから、防災計画は震度5を想定した。
でも震度7の地震が起き、「震度7を想定してくれていれば」と市民から重い言葉をもらいました。
そこから「想定外」を大切に、国内外の被災地を歩き、行政だけでなく市民同士の対話を大切に、復興・減災の支援をしてきました。

◆ボランティア絞り、公の活動足りず、後手の対応続く

――初動について、詳しくどう見ていますか。

自衛隊、警察、消防の邪魔になるからと、民間の支援者やボランティアが駆けつけることを制限しました。
でも、初動から公の活動だけではダメで、民の活動も必要でした。
医療看護や保健衛生だけでなく、避難所のサポートや住宅再建の相談などに専門のボランティアの力が必要でした。

苦しんでいる被災者を目の前にして、「道路が渋滞するから控えて」ではなく、「公の活動を補完するために万難を排して来て下さい」と言うべきでした。

マンパワー不足と専門的なノウハウの欠如で、後手後手の対応が続いてしまっている。
政府は「お金は出します」というリップサービスではなく、関連死を防ぐなどの緊急ニーズに応えられる具体的な対策を提供すべきで、
「必要な人材を出します」というサービスに徹するべきです。