ふだんは他の本業を持ちながら、災害があれば現場に出動する「消防団」を巡り、自治体から団員に支給される報酬を消防団が不当に徴収するケースが横行している。国は徴収しないよう通知しているが、少なくとも9市町村の消防団員らが、毎日新聞の取材に報酬を強制的、または半強制的に徴収され、飲み会などに流用されていると証言した。

 消防団員の報酬を巡っては、かつて多くの市町村が消防団にまとめて振り込み、団員に支払われないまま飲み会や旅行に流用されるケースが各地で発覚した。総務省消防庁は2021年4月、団員に直接報酬を支給するよう自治体に通知したが、団員に振り込まれた報酬を、消防団が再び徴収するなど手口が巧妙化している。

 取材に証言したのは、北海道佐呂間町▽岩手県奥州市▽福島県いわき市▽茨城県東海村▽栃木県益子町▽名古屋市▽岡山県津山市▽熊本市▽熊本県玉名市――の計9市町村の消防団員ら。

 福島県いわき市の団員は、自らの口座に振り込まれた報酬の約4割を支団や分団に自動振り替えさせられていると証言。「口座を作るよう指示され、間を置かずに自動振り替えの手続きをさせられた。上の指示は絶対なので逆らえない」と話した。

 熊本県玉名市の団員は、報酬受け取りを消防団に委任するという「委任状」に署名と押印をさせられ、団員には一切報酬が支払われていないと証言。「飲み会や旅行に使われているのではないか。大勢のコンパニオンを呼んだ派手な宴会や一気飲みが嫌で退団した若者もいた。今の時代にありえない」とあきれた。

 全国の消防団員は76万2670人(23年4月現在)。若者の入団が少なく、減少傾向が続いている。

 消防庁は取材に「適切ではない。早急に是正してほしい」としており、自治体に改善を求めて周知を図る方針だ。

https://news.yahoo.co.jp/articles/67b7d127df1d49fca8fa08d69df5e96213853a9e