私は、コロナ禍前の2019年に約55億円だった売上高が、2020年には約46億円と低迷していた事実を紹介した。

ところで、オーサムストアがコロナ禍で無策だったわけではない。むしろ、私には施策を次々と繰り出しているように見えた。


■さまざまな施策も結局、売上を維持・拡大できなかった

オンラインだけでも、オフラインだけでもなく、OMO型の旗艦店を渋谷にオープンしたのは、むしろコロナ禍に突入したあとの2021年3月だった。
コロナ禍では、自宅ですごす時間が増える。だから、生活用品の需要が高まるのは一過性のトレンドではない、と踏んだ。
私は渋谷の同店に、数度しか行った経験はないが(現在、閉店)、アメリカ調の内装は印象に残った。

また、たとえば人と人との接触が減少したコロナ禍では、飼い猫や飼い犬などペットのブームが起こった。
そこでオーサムストアでは、ペットグッズを直ちに大展開した。ペットグッズを前面に出すだけではなく、「にゃんバサダー」「わんバサダー」を募集し、アンバサダーとして起用、商品とともにSNSで発信してもらう試みなどを開始した。

そのころペット関連の売上は伸びていたし、私は当時、同社のプレスリリースを見て「わんバサダー5名、にゃんバサダー5名」なる表現があったことから「そりゃ人じゃなくて、匹とか頭だろうよ。あ、でも、人間とおなじくらい大切に思っているってことかあ」と奇妙に納得した記憶がある。どうでもいい話で失礼。

また、コロナ禍ではお笑い芸人とタッグを組み、商品を企画して、その魅力やポイントを訴えかける企画も実施した。ネットの拡散をねらい、店舗との融合を目指してきた。

旗艦店の出店がまずかったのではないか、とか、もっと他カテゴリの商品を増やさねばならなかったのではないか、とか、すべては結果論。
コロナ禍前であれば好施策だったかもしれないが、物流センターや店舗などの経費がかさんでいたのも事実だろう。