さいたま市は新年度、「デジタル地域通貨」の運用を始める。今年6月から、スマートフォン用の専用アプリに好きな金額をチャージすると、サービスに加盟する市内全域の店でQRコードを読み取るなどして買い物ができる。店が負担する「決済手数料」は、民間の電子決済サービスより安く設定する。市経済局は、新年度当初予算案に関連経費約11億6千万円を計上するよう要求している。

 市は、市外の民間電子決済サービス事業者に毎年、市内から300億円以上が決済手数料として「流出している」と推計。決済手数料を民間より安くすることで、市内の店の負担を軽くしたい考えだ。

 また、市内の店舗の売り上げを伸ばすため、最初の5年間はチャージした金額の3%分を利用者にポイントで還元する。この経費は市がまかなうという。

 専用アプリの名称は「市民アプリ」で、新たに開発する。市立図書館の利用者カードの機能や、防災情報の提供などもする。また、市からの給付金をデジタル地域通貨で給付できるようにする予定だという。

 運営は、4月に設立予定の地域商社が担う。市は2千万円を出資する方針で、市内の企業や金融機関にも出資を要請している。

 デジタル地域通貨について、市商業振興課は「全国展開する民間のサービスとは異なり、一定地域内の経済活性化が目的。民業圧迫にはつながらない」とする。加盟店は約6千店、利用者は約30万人まで増やすのが目標だという。

 市によると、市全域を対象としたデジタル地域通貨の導入は、政令指定都市では初めて。県内では深谷市と熊谷市が導入済みという。(岩堀滋)
https://www.asahi.com/articles/ASS1M7FB3S1LUTNB00L.html