「今後はロシア軍が有利」は完全な間違い...「すでに自国内の制空権さえ失っている」と考えられるロシアの深刻事情

ロシアは自国内の制空権さえ失っている?

そこには、1月14日のアゾフ海におけるロシア空軍機A-50(メインステイ)早期警戒管制機の被撃墜と、Il-22(Il-20クートB)空中指揮機の被撃破(撃墜は免れ大破)という、衝撃的な出来事があったからだと考えられる。なぜならば、この事象は、ロシア軍にとって、同海軍が黒海艦隊の旗艦であるスラヴァ級ミサイル巡洋艦「モスクワ/CG-121:12,500トン級)」を撃沈されたのと同等のダメージをもたらしたと考えられるからである。

そもそも、ハイバリューアセット(高価値目標)であるAWACS(早期警戒管制)機が戦時中に撃墜されるなどというのは、世界でも過去に前例のないことであった。これは、ロシアが実効支配しているウクライナの地域はもとより、ロシアの領土内にまで自国の制空権が失われていることを意味しており、ロシア軍にとってこれは極めて深刻な戦況となっている実態を表している。

今後、ウクライナに供与されたF-16戦闘機が実動を始めたら、前線のロシア軍は手痛い打撃を食らうことになるだろう。

地上戦では膠着状態が続いており、今後はロシアが優位な展開になるとの見方も優勢である。しかし、筆者はそうは思えない。制空権が得られない状態での安定した領土獲得などあり得ないからである。ロシアもそれを危惧していることが、今回の事案で見て取れるのである。

ロシアは、このような懸念される情勢を見越して、今後この事案を契機に、両国の国境付近に一部飛行禁止空域の設定などを提案してくる可能性も考えられる。もちろん、その先には「停戦」ということも念頭に置いていることだろう。その落としどころを模索し始めているのではないか。このままでは、さらに長期化し、漸次兵力も装備も損耗していくことは明白であるからだ。

今後の推移に注目したい。

https://gendai.media/articles/-/123929