世界と「中国との一体化」深まる-トランプ氏が好む指標では分からず
⚫︎23年の対中貿易赤字、米GDP比1%程度で03年以来の低い割合か
⚫︎中国から米国への出荷、第三国を経由することが増えている
バイデン米大統領は、ライバルのトランプ前大統領お気に入りの指標から判断すると、中国との貿易戦争に勝利している。
米国の国内総生産(GDP)に対する対中貿易赤字の割合がその指標だが、問題なのは世界で最も重要な経済関係を測る尺度として、一段と欠陥が目立つようになっていることだ。
7日に発表される米国の2023年対中貿易赤字について、ブルームバーグ・エコノミクス(BE)は、米GDP比1%程度で、2003年以来の低い割合になると見込んでいる。
この数字は、トランプ政権が始めバイデン政権になって強化された関税・輸出規制によって、米中経済のデカップリング(切り離し)深まっていることを示唆している。11月の大統領選を控え、政治的に重要な経済のシグナルともなる。今年の大統領選はバイデン氏対トランプ氏と、20年の再現となる可能性が高まっている。
コーネル大学とブルッキングズ研究所で貿易と中国経済を専門に扱うエスワー・プラサド氏は、「トランプ氏が厳しいことを言い、バイデン氏が結果を出したようだ」と述べた上で、「2国間の対中貿易赤字を米国の成功とその貿易関係を管理するための正しい評価基準」と考えた場合にのみ、この結論が導き出されると付け加えた。
多くのエコノミストと同様、プラサド氏も、トランプ氏が中国など外国との貿易赤字を、経済関係において米国が有利か不利かを見極める重要な尺度として挙げていることに、何年も危機感を抱いてきた。
エコノミストらによると、米国は1970年代から対外貿易赤字を抱えているが、それは貿易政策の結果であると同時に外国人投資家がドル資産に魅力を感じているためだ。
対中貿易赤字が不完全な指標である新たな理由もある。アジアの製造業大国である中国から米国への出荷が、ベトナムやメキシコといった第三国を経由することが増えているのだ。
トランプ政権が2018年に約3000億ドル(約45兆円)相当の輸入品に関税を課して以来、中国企業は課税を回避するためにメキシコやベトナムなどにある新工場への投資を増やしてきた。
関税は「多国籍企業に代替ソースを探させた」が、「中国への依存度が下がるということではない」とピーターソン国際経済研究所シニアフェローのメアリー・ラブリー氏は指摘。
多くの場合、米国が中国以外の外国からの輸入を増やすにつれ、そうした国々の中国との経済的なつながりは強まっている。米国以外の「世界は中国との一体化を深めている」とラブリー氏は述べた。
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https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-02-06/S8ES3AT1UM0W00