有吉弘行が今なお支持され続ける理由 築いたバラエティーのお山

『第74回NHK紅白歌合戦』の司会に抜擢され、今年も活躍が目立った有吉弘行。2007年の再ブレーク後、なぜ彼は支持され続けているのだろうか。
タレントとしてのスタンス、持ち味を生かした企画の面白さ、時折見せる哀愁と用意周到さなど、多角的な視点でその魅力に迫る。

TPOを意識したスタンス
昨年10月、『有吉クイズ』(テレビ朝日系)が火曜ゴールデンタイムに昇格し、有吉弘行は月曜〜日曜のゴールデン・プライム帯のすべてで冠番組を持つ快挙を成し遂げた。
今年10月から『有吉クイズ』は日曜深夜帯に移ったものの、『第74回NHK紅白歌合戦』の司会に抜擢されるなど、その勢いはとどまることを知らない。
彼がテレビスターとして支持され続ける理由はどこにあるのだろうか。

先月13日に放送された特番『有吉弘行の脱法TV』(フジテレビ系)は、その答えを示す1つの証拠だったように思う。
コンプライアンスが叫ばれる現在のテレビ界において「なぜサッカー選手やアーティストの刺青はOKで芸人がNGなのか」
といった曖昧なラインを番組で検証し、具体的な抜け穴を探そうという内容だった。

とはいえ、検証企画の1つひとつは実にバカバカしいものだ。例えば「腕と脚にタトゥーがあるアーティストが並行してピン芸人の活動を始めた場合、
お笑いライブでネタを披露する姿は放送できるのか」という企画。一見すると中学生が言い出しそうな屁理屈だが、
真っすぐに検証を実行するあたりに得も言われぬエネルギーを感じる。

放送可否のジャッジは、局のコンプライアンス担当者や番組プロデューサーをはじめとする「コンプライアンス委員会」によって行われ、
NGと判断されたところで映像はカットアウト。前述のアーティストは、ライブ会場の舞台に登場した瞬間にカラーバーへと切り替わった。

コンプライアンス委員会がNGを出した理由は「前例を作ることになるため」という保守的なものだ。
その後も、「乳首」「海賊版ガチャピン」「ポルノビデオ」がどこまで許容されるのかを検証。
やっていること自体はくだらないかもしれないが、“テレビがテレビを批評する”という今の地上波ならではの趣向が感じられた。

『有吉くんの正直さんぽ』(フジテレビ系)や『有吉ゼミ』(日本テレビ系)など、幅広い年齢層に向けた番組に出演し続ける中で、
過剰なコンプライアンスに尻込みする今のテレビ制作の在り方にもしっかりと釘を刺す。このTPOを意識したスタンスが視聴者からも制作者からも信用を得ているのではないか。

ミステリアスで予定調和を壊す
ここ数年、もっとも有吉らしさを感じるのが、ユニークな企画で人気を得ている『有吉クイズ』だ。

有吉や解答者のプライベートを切り売りした「プライベート密着クイズ」、様々な飲食店を巡り無言のまま食事を堪能する「有吉とメシ」、
しばらく動いていないLINEグループにコメントを投稿して反応をうかがう「LINEグループ既読チキンレース」など、ここでしか見られないラインナップとなっている。

2020年から始まった世界的な写真家レスリー・キーとのフォトセッションによる「有吉カレンダー」も今年で4度目を迎えた。
ボンテージファッション、ウェディングドレス、オードリー・ヘプバーン風など、奇抜ながらも性別を超えた魅力を放つ有吉が実に新鮮だ。

こうして見ていくと、番組の企画には2つの特徴があることに気付く。1つは、予定調和を壊して笑わせるもの。「既読チキンレース」は最たるものだが、
『クイズ☆正解は一年後』(TBS系)やラジオ番組『有吉弘行のSUNDAY NIGHT DREAMER』(JFN系)などでも有吉の意図的かつ巧妙な“悪ノリ”を感じることができる。

もう1つは、有吉自身が様々な場所に出向くロケ企画だ。とくに「密着クイズ」では、有吉がOラインの脱毛を体験したり、
ためらいなく素揚げのクモや豚の脳みそ炒めを食したり、漫画家でタレントの蛭子能収と交流を重ねたり……と印象的な回が目立つ。

プライベートを追っているはずが、回を重ねるほどに有吉のミステリアスな面白さが際立つのだから不思議だ。千鳥やかまいたちとは別種のロケの面白さで、
そこは原点とも言える『進め!電波少年』(日本テレビ系・1998年1月終了)の過酷な旅企画「ユーラシア大陸横断ヒッチハイク」による影響もあるのかもしれない。
https://withnews.jp/article/f0231230000qq000000000000000W0e410501qq000026479A