「地元には帰れないし、県外には行きたくない。ここにいたいのに」。石川県が7日、能登半島地震で南加賀のホテルや旅館などに2次避難している被災者向けに「転居」を促す説明会をスタートさせた。
3月16日の北陸新幹線延伸を控え、観光客を取り込みたい宿泊施設側の意向を受けた対応とみられるが、県が確保する住まいは半数以上が県外。
地元に戻るめどが立たず、新幹線開業までというリミットが間近に迫った中での要請に困惑の声が上がった。

初回の説明会は珠洲市や輪島市などから約300人が避難する加賀市山代温泉の旅館「みやびの宿 加賀百万石」で開かれ、約210人が参加した。
県によると、ホテルや旅館などの2次避難所は新幹線延伸に合わせて、2月末~3月末までの利用を想定。加賀百万石は3月上旬が「退居期限」だ。

今後の住まいについて、県側は▽修復した自宅に住む▽仮設住宅▽行政が家賃を負担する民間住宅(みなし仮設住宅)▽公営住宅―の四つの選択肢を示した。
ただ、応急的な住宅として3月末までに県が着工・確保するとしている2万700戸のうち、1万2300戸は県外。
特に仮設住宅は約1300戸が3月末で入居可能となる見込みだが、現時点で7090戸の申請があり、いつ入居できるかはっきりしない。
「生まれ育った地元で暮らしたい」「せめて県内で」という被災者の思いには十分に応えられない状況にある。

珠洲市宝立町善野から避難している山下一男さん(84)は「本当は地元に帰られるようになるまでここにいられるのが一番いい。県外には行きたくない」と県の対応に不満を漏らした。
帰省先の輪島市で被災し、共に2次避難する両親に代わって説明を受けた野々市市の会社員堂前秋男さん(59)は、両親の今後の住まいを決めかねているという。
「今は集落みんな一緒でありがたいが、出た後はばらばらになるだろう。本音を言えば、暖かくなる5月ごろまでここにいさせてもらいたい」と話した。

珠洲市、輪島市の職員は上水道の復旧見込みや、建設中の仮設住宅について説明したが、輪島市大沢町区長の大箱洋介さん(75)は「戻れるめどが聞けるかと思ったのに、移る先の住宅の話ばかり。
これからどうなるか不安だ」とこぼした。

会場では被災者のニーズを把握するため、自宅の被害や入居申請の有無などを問う意向調査の用紙が配布された。説明会は他の避難所でも順次実施する。

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