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してるんだ

枢密院会議筆記 伊藤博文
「憲法政治は東洋諸国に於て,曾て歴史に徴証すべきものなき所にして,
之を我日本に施行する事,全く新創たるを免れず.
故に実施の後その結果,国家の為に有益なるか或は反対に出づるか
予め期すべからず.然りと 雖も二十年前既に封建政治を廃し,
各国と交通を開きたる以上は,その結果として国家の進歩を謀るに此れ
を捨てて他に経理の良途なきを奈何せん.夫れ他に経理の良途なし,
而して未だ効果を将来に期すべからず. 然れば則ち宜くその始に於て
最も戒慎を加へ, 以て克くその終あるを希望せざるべからざるなし.
すでに各位の暁知せらるる如く,欧州に於ては当世紀に及ん
で憲法政治を行はざるものあらずと雖も,是れ即ち歴史上の沿革に
成立するものにして,その萌芽遠く往昔 に発せざるはなし.
之に反して我国に在ては事全く新面目に属す.

故に今憲法を制定せらるるにあたっては,先づ我国の機軸を求め,
我国の機軸は何なりやと言ふ事を確定せざるべからず.
機軸なくして政治を人民の妄議に任す時は,政その統紀を失ひ国家亦た随て廃亡す.

いやしくも国家が国家として生存し人民を統治せんとせば,
宜く深く慮りて以て統治の効用を失はざらん事を期すべきなり,
そもそも欧州に於ては憲法政治の萌せる事千余年.
独り人民の此制度に習熟せるのみならず, 又た宗教なる者ありて之が
機軸を為し,深く人心に浸潤して人心此に帰一せり.
然るに我国に在ては宗教なる者その力微弱にして,一も国家の機軸たるべきものなし.
仏教は一たび隆盛の勢を張り,上下の人心を繋ぎたるも,今日に至てはすでに
衰替に傾きたり.神道は祖宗の遺訓に基き之を祖述すと雖も,
宗教として人心を帰向せしむるの力に乏し.

我国に在て 機軸とすべきは独り皇室あるのみ.←★ココが有名なヤツ
是を以てこの憲法草案に於ては専ら意を此の点に用ひ,
君権を尊重して 成るべく之を束縛せざらん事を勉めたり.