「脱成長コミュニズム」で複合危機を乗り越えよう 斎藤幸平さん
https://mainichi.jp/articles/20240205/k00/00m/030/226000c
自然災害、戦争、食料や天然資源の不足、インフレといった複数のリスクが絡み合い、予測できない結果を引き起こす「複合危機(ポリクライシス)」に今、世界が直面している。危機はなぜ到来したのか。私たちは何ができるのか。「脱成長」をキーワードに複合危機への処方箋を探る東京大の斎藤幸平准教授に聞いた。

複合危機はトップダウン型政治を招く
 ――世界の平均気温は2023年、観測史上最も高くなり、「地球沸騰化」の時代が到来したとも言われています。

◆欧州連合(EU)の気象情報機関によると、産業革命前の平均から1・48度上昇しました。気候変動対策の国際枠組み「パリ協定」で1・5度以内に抑えるとした上昇幅を超えようとしています。あっという間にここまで来てしまった。

 2万人とも言われる死者が出たリビアの洪水や、カナダの山火事など異常気象も頻発しました。こうした異常気象は水不足、食料危機といった新たな問題を引き起こします。そして食料、水が足りなくなれば資源や土地をめぐる争いが起こります。価格高騰によるインフレが加速します。庶民の生活は圧迫され、格差が広がります。

 気候変動をモーターに環境危機、地政学的リスクの増大、インフレ、格差拡大と危機は併存するだけではなく、互いを増幅させ、加速させる。これが複合危機の時代です。