「麻生太郎さんにはあの番組を見せたくない」で爆笑 ネトフリで磨いた安倍晋三“エンタメ宰相”の雑談力

この『安倍晋三 回顧録』などから安倍の座談や発言を丁寧に拾い上げると、前後のどの首相、さらにいえば現在のどの政治家とも異なる安倍首相独特の資質が浮かび上がる。結論から言えば、それはゲーム、ネット配信のドラマシリーズ、スポーツ観戦などエンターテインメントをことのほか楽しみ、そのリズム感を政治に活かす力である

いわば「エンタメ力」とでも言うべき力が、人間安倍にはあふれ出ていた。抜群のエンタメ力を政治に導き入れた宰相安倍――あの長期安定政権を生み出した駆動力は、そこにあったのではないだろうか。

 リオデジャネイロ五輪の閉会式で、次期開催国の首相として安倍は、任天堂のゲームキャラクター・スーパーマリオに扮して登場した。その映像は、国葬の回想ビデオでも使われるほど、安倍政権の明るい側面を象徴するものだったが、若干照れているようでありながら、安倍首相は悦に入っているようでもあった。同じような姿を、その後の菅・岸田首相たちに想像することは到底できない。安倍ならではのエンタメ力の発露だったのである。

 もちろん政治のエンタメ化だと批判するのは簡単である。エンタメを使って、その保守的で権力追求型の政治姿勢をごまかしたというのは「アベ政治を許さない」と叫ぶリベラルの見立てである。だが、専門知と教養を自負するリベラルの目線では、現代という時代に必須のリーダーの資質を見逃してしまう。
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