だが、日本の大盤振る舞いは突出している。GDP比の支援規模は米英仏独を超え、補助率も高い。米国は融資や債務保証を組み合わせ、補助率は5~15%程度だ。

 日本政府の前のめりが際立つのが、次世代半導体の開発・量産を目指すラピダスへの支援だ。最低でも2兆円規模とされる投資のほぼ全額を国費でまかなう方針という。トヨタ自動車やNTTなど民間8社も株主だが、出資額は計73億円にすぎない。

 経済産業省は、ラピダスの半導体は将来の自動運転に必要で、財政負担は税収で取り返せるという。だが、10年以上ともされる技術の遅れを取り戻した上で顧客を開拓し、毎年数兆円の投資を続けなければ勝ち残りは難しい。

 半導体をめぐる国策は失敗の連続だった。その反省もなく、官が決めた特定事業に強引に人材や資材を張り付け、その結果として他の分野がおろそかになるようなことがあれば、逆に競争力を落としかねない。

 産業振興に際し、基盤技術の研究開発支援やインフラ整備では政府の役割も大きい。だが、個別事業は民間企業が投資主体になり、競争の中で切磋琢磨(せっさたくま)するのが市場経済のエンジンのはずだ。国内企業の現預金は350兆円に達し、資金は十分ある。

 いま半導体産業誘致が進む地域は活況に沸いている。技術者の挑戦も応援はしたい。

 だが、経産省や政治家が「半導体の復権」を唱え、国内生産を自己目的化するような動きは合理的ではない。政府主導の産業政策は非効率と無責任がつきまとい、失敗の尻ぬぐいは国民負担である。
https://www.asahi.com/articles/DA3S15861453.html