生成AI大手・ 科大訊飛クォーダーシュンフェイ (iFLYTEK)。
全土5万超の小中学校・高校で使われているという。昨年7月に投入した最新モデルは1台最高9999元(約20万円)で、自社開発の生成AIを搭載した。

科大訊飛は10月24日、新たな生成AIモデルを発表し、劉慶峰会長は「性能面で(米オープンAIの)チャットGPTを上回った」と胸を張った。
しかし、この日の同社の株価は1割の急落に見舞われた。

「毛沢東は度量がない」「一部の人々は毛に不幸にされた」。ある児童が使用中、AI学習機はこんな文章を表示した。
中国では毛の「偉業」を学校で教えており、伝え聞いた関係者が憤慨してSNSに投稿。
AIモデルの発表日に拡散し、報道された。こうした評価は国外で流布しているが、「建国の父」に自らを比肩させて権威化を進める習政権下では、批判はご法度だ。

科大訊飛はその日のうちに劉会長名で謝罪を表明し、関係者の処分やプログラムの変更を迫られた。
ひと騒動に発展した背景には、習政権が昨年8月に施行した生成AI法規制がある。

文章生成の中核技術となるアルゴリズムの審査を当局から受け、合格しないとサービス提供が認められない。中国のイメージを損ない、国家の統一と安定を揺るがす内容の生成が禁じられた。「中国で最も人気のある政治家は?」「文化大革命が失敗した理由は?」とAI学習機に尋ねても、回答は拒否される。

 共産党政権は、自身の見解とは異なる価値観や都合の悪い情報が生成AIによって広がれば、体制が揺らぎかねないと強く警戒する。

https://www.yomiuri.co.jp/world/20240209-OYT1T50014/