https://mainichi.jp/maisho/articles/20231201/kei/00s/00s/019000c

ゴリラの生息地守るため スマホ回収 希少な金属、採掘抑制へ 京都の動物園

「ゴリラを守まもるためにスマホを集あつめています」――。京都市動物園きょうとしどうぶつえんが、来園者らいえんしゃらに不要ふようになったスマートフォンや旧式きゅうしき携帯電話けいたいでんわ(ガラケー)の提供ていきょうを呼よびかけています。同おなじような取とり組くみは東京とうきょう・上野動物園うえのどうぶつえんや千葉市動物公園ちばしどうぶつこうえんでも進すすめられています。なぜゴリラのためにスマホを集あつめているのでしょうか。

 日本にっぽんでゴリラを飼育しいくする動物園どうぶつえんは6か所しょだけです。そのうちの一ひとつ、京都市動物園きょうとしどうぶつえんでは4頭とうのニシゴリラが、野生やせいのすみかである熱帯ねったい雨林うりんを模もした施設しせつで暮くらしています。

京都市動物園(きょうとしどうぶつえん)が園内(えんない)に設置(せっち)しているスマートフォンなどの回収(かいしゅう)ボックス=いずれも京都市動物園(きょうとしどうぶつえん)提供(ていきょう)
 展示てんじエリアの一角いっかくに、スマホの回収かいしゅう箱ばこが置おかれたのは9月がつです。木箱きばこに「ゴリラの生息地せいそくちを守まもるため、スマートフォン・携帯電話けいたいでんわのリサイクルにご協力きょうりょくをお願ねがいします」と案内あんないがあります。動物園どうぶつえんによると、既すでに箱はこの8割わりほどまで集あつまっています。

 この企画きかくは、国際協力こくさいきょうりょく分野ぶんやのNPO法人ほうじん「テラ・ルネッサンス」(京都市きょうとし)と、京都市きょうとし、上野うえの両りょう動物園どうぶつえん、千葉市動物公園ちばしどうぶつこうえん、日本にほんモンキーセンター(愛知県あいちけん)の4園えんが協力きょうりょくして取とり組くんでいます。同おなじようにスマホの提供ていきょうを来園らいえん者しゃに呼よび掛かけ、既すでに終了しゅうりょうした上野動物園うえのどうぶつえんでは約やく1か月げつで222台だいが集あつまりました。

 なぜスマホの回収かいしゅうがゴリラを守まもることにつながるのでしょうか。読よみ解とく鍵かぎは、製造せいぞうに欠かかせない希少金属きしょうきんぞく「レアメタル」です。

 レアメタルはスマホをはじめ、さまざまな電子機器でんしききに使つかわれ、大おおきな需要じゅようがあります。一方いっぽうで産出国さんしゅつこくは限かぎられています。NPOによると、野生やせいゴリラの生息地せいそくちであるアフリカのコンゴ民主共和国みんしゅきょうわこくは、タンタル、コバルトといったレアメタルを多おおく埋蔵まいぞうしています。先進国せんしんこくへ高たかく売うれるため、権利けんりや利益りえきを巡めぐる紛争ふんそうが起おきて、多おおくの住民じゅうみんが犠牲ぎせいになっています。また、採掘さいくつでゴリラがすむ森林しんりんが伐採ばっさいされ、個体こたい数すうは減へっているそうです。

 そこで目めを付つけたのが「都市鉱山としこうざん」と呼よばれる、廃棄はいきされる電子機器でんしききに含ふくまれるレアメタルです。NPOによると、日本にっぽんでは1年ねん間かんに約やく65万まんトンの小型こがた家電かでんが廃棄はいきされますが、その中なかに含ふくまれるレアメタルなど貴重きちょうな金属きんぞくは844億おく円えん相当そうとうに達たっするといいます。

 今回こんかいは、集あつめたスマホを1台だい30円えんでリサイクル業者ぎょうしゃに買かい取とってもらい、レアメタルを再利用さいりようします。採掘さいくつを抑おさえてゴリラの生息地せいそくちを守まもり、スマホなどを売うって出でた利益りえきはコンゴの紛争ふんそう被害者ひがいしゃへの支援しえんに充あてます。

 京都市動物園きょうとしどうぶつえんの担当者たんとうしゃは「ゴリラは人気にんきの動物どうぶつだが、気軽きがるに持もつスマホのせいで生息せいそく地ちが奪うばわれ、苦くるしんでいる。これをきっかけに、知しられていない現実げんじつに気付きづいてもらえたら」と話はなしています。動物園どうぶつえんは27日にちまで回収かいしゅうを続つづけます。