イギリスで行われた調査によると、イギリス人男性の71%は少なくとも1度は女性から、何らかの性的被害を受けていることがわかったという。

 1124人を対象にしたアンケート結果によると、性的被害で一番多かったのは体を触られることだが、回答者の40%が性的行為を強制されたことがあるという。

 男性の場合、女性からそのような目にあっても苦しむことはないというイメージもあるが、
実際には不安・うつ・PTSDといった症状が生じた被害者もいて、男性も心に大きな傷を負うことがうかがえる。

・男性が女性から受けた性的被害は軽視されがちな傾向

 性的被害とは、個人が望まない性的行為や行動を強制されることを指す。
これには、身体的接触(強制的な性的暴行、不適切な触れ合い)から、非接触型の性的行為(性的嫌がらせや性的な言葉による嫌がらせ)まで幅広い行為が含まれる。

 一般に、性的被害の被害者は女性で、加害者は男性であるケースが多く、その保護や予防策などは重要な社会政策上のテーマとして、メディアなどで頻繁に取り上げられる。

 一方男性が女性から受けた性的被害に対する関心はそれほど高くなく、仮にあったとしても軽視されがちだという。

 だが本来、性的被害の加害者と被害者に性別は関係がない。女性でも男性でも、相手に同意がなければ加害者になりうる。

・男性の性的被害が軽視される理由

 なのになぜ男性の性的被害は無視されるのか?

  エディンバラ大学のジャスミン・マジュレシ氏とスティーブ・ローナン氏によるなら、その理由の1つは、性別にまつわるイメージの違いだという。

 女性は「優しく、従順で、弱い」というイメージがある一方、男性は「肉体的に強く、攻撃的で、自立している」というイメージがあるため、
そもそも性的被害に遭うことなどありえないと考えられがちなのだ。

 だが現実にはどうなのか? それを調べることが今回の調査の目的だ。

・英国人男性の7割は静的被害を経験していることが判明

 この調査対象となったのは、Prolific Academicを通じて募集された異性愛のイギリス人男性1124人だ。

 参加者は、オンラインで性的被害に関する質問に回答したほか、男らしさに関する意識、さらには不安・うつ・PTSDといった心の状態などについても回答した。

 その結果、男性の71%が少なくとも1回は女性から性的被害を受けていることが明らかになった。
繰り返し被害に遭う男性もおり、57%が2回以上、45%は3回以上と回答している。

 手段の如何を問わず、40%が挿入を強制された(されそうになった)経験があると回答。

 多くは心理的な支配(33%)、酩酊のような同意不能な状態にする(29%)といった手段で迫られていたが、
力ずくや身体への脅迫などを受けたケースも5%あった。

 一番多い性的被害は「同意なく体に触れる」ことで、次いで「性交」「キス」、「口内性交/肛門性交」および「公共の場でのハラスメント」の順だった。

 またこうした被害に遭う頻度が多い人ほど、「不安・うつ・PTSD」といった症状が重くなる傾向も見られた。

・ただし自己申告なのでバイアスがある可能性も視野に入れるべき

 この研究は、男性の性的被害という、見過ごされがちな問題に光を当てたものだ。

 論文では、「男性が女性から性的被害を受けていることを明らかにし、その結果として男性が精神的に苦しむことがないという文化的神話に反証する」と述べられている。

 ただし、この研究はあくまでネットを通じた自己報告に基づいたもので、バイアスがある可能性について留意しなければならない。

 またこの研究から因果関係までは推測できないという。

https://karapaia.com/archives/52329487.html