埼玉県北本市南部にある縄文時代の大規模集落遺跡「デーノタメ遺跡」を国指定史跡にしようと、市が月内にも文化財保護法に基づく手続きに入る。縄文中期から後期(約5000~3500年前)の集落跡としては関東最大級の大きさで、貴重な出土品もある。この場所での道路建設と区画整理は昨年、見直しが決まり、市は遺跡周辺を公園として整備していく方針だ。

 遺跡は台地に環状(ドーナツ形)に広がる集落跡と水場遺構がある低湿地からなり、その範囲は約6ヘクタールに及ぶ。調査の結果、青森県の三内丸山遺跡に匹敵するほど長期にわたって使われた場所と判明している。

 住宅開発が進んだ高度経済成長期の1969年、遺跡を縦断する都市計画道路の整備が決まり、96年には区画整理(44ヘクタール)の対象にもなったが、その後の地価下落などで事業は停滞。一方で遺跡の重要性への評価は高まり、市も2020年頃から開発計画の見直しに傾いた。23年4月、国史跡の指定を訴えた三宮幸雄市長が再選されると、同6月には、遺跡にかからないよう道路を 迂回うかい させ、区画整理の対象からも除外することが正式に決定した。

 国史跡の指定までに、市からの意見を踏まえて文部科学相が文化審議会に諮問し、答申を受けるというプロセスが待つ。円滑に進めば今秋の指定があり得るため、市は25年度以降の公園整備を目指す。市文化財保護課は「指定されれば、遺跡の学術的な価値が伝わり、観光振興にも追い風になる」と期待している。
全体が手つかずで維持され稀有な例」日本考古学協会
 デーノタメ遺跡(北本市下石戸下)は1969年、周辺開発に伴って当時の北本町が行った調査で見つかった。近くにあった湧水のため池が名称の由来だ。98年度の調査で、集落跡が広範囲に及ぶことがわかり、2007~08年度には、鮮やかな色の漆が塗られた土器や、通常は残りにくいクルミなどの有機物など、全国でも珍しい遺物が相次いで出土した。

出土した漆塗りの土器(北本市教育委員会提供)
 日本考古学協会は20年、「当時の生活環境などの貴重な情報が集落跡とともに豊富に残され、遺跡全体がほぼ手つかずで維持されている。全国的に見ても 稀有けう な例」とし、北本市に国指定史跡を目指すよう促していた。
https://www.yomiuri.co.jp/national/20240211-OYT1T50046/