「ガザ停戦を」声上げないは恥ずかしい 広島でデモ、叫ぶ43歳(毎日新聞)
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「声上げないのは無理ですね。逆に恥ずかしい」。芸術団体「PEXPOX」代表の安藤健史さん(43)は2月4日、イスラエルから攻撃を受けるパレスチナとの連帯を示すデモ行進の先頭にいた。中区の原爆ドーム前に着くとマイクで叫んで倒れ込んだ。「今すぐ停戦しろーーーっ」【矢追健介】

横浜市で生まれ、10歳から広島で暮らす安藤さん。社会や政治的な問題をテーマとするハードコアパンクに10代からのめり込んだ。「パンクは社会の弱者のための音楽。反骨心や自由を叫ぶ。自分の感覚と一緒だと思った」。パンク関連の雑誌を読んで軍需産業へ投資する企業へのボイコットなどを知り「生きることを自分たちの手から奪わせないための考え方」を学んだ。反戦の教科書はハードコアパンクだった。

10代後半にバンドを結成。ノイズミュージックと呼ばれる分野の表現を突き詰め、広島を拠点に世界のアーティストと交流しながらアートや音楽のイベントを開いてきた。

中東を巡る問題を強く意識するようになったきっかけはSNSだった。海外アーティストらが黒人への暴力や差別に抗議する「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命は大事だ)」運動などさまざまな社会問題を次々と発信し、アメリカからの帰国子女の友人はパレスチナが抱える問題を訴えていた。繰り返し見るうちに身近に感じるようになった。

2023年10月7日、イスラム組織ハマスとイスラエルの紛争が始まると「自分たちが放っといたからこうなった。もうこれ以上放っとけない」と行動をスタート。パレスチナへの寄付を募り、1月からは毎週土曜の午後4~7時に原爆ドーム前で音楽やアートのイベント「Saturday Vigil」を開いて訴える。

イスラエル軍による空爆や地上侵攻により、ガザ地区などで2万8000人以上が亡くなったとされる。パレスチナ自治区内の占領や入植を「そもそも許せない。元々住んでいたパレスチナ人を人として見ていないのかな」と憤る。

原爆ドーム前の運動をSNSに投稿すると、イスラム教徒やパレスチナ人らに広く拡散されるという。「『すごい、広島で言ってるよ』みたいな感じ。ここでやってると世界に広がるんです」。日本政府が国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)への資金拠出中止を決めたことに対し「日本の政府と国民は必ずしも同じ考え方ではないことも伝わるはず」と発信する意義を説明する。

イスラエルはガザ南部のラファ地区への侵攻を明言し、12日に空爆した。そこには各地から避難してきた130万人以上がいる。「日本が声を上げなきゃ駄目だ。広島市長には一番に言ってほしい。県も他の市町も停戦に関する決議をしてるのに」と語気を強める。

世界の都市では万単位の人が参加する大規模デモが起きている。原爆ドーム前に集う数は世界規模のデモには及ばない。それでも安藤さんはぶれない。「世界中が連帯しないとパレスチナ問題は解決しない。声上げて社会全体を盛り上げて大きいデモを起こせば政府も動く。国民のいない政府はない。広島で、日本でデモをやるのは無駄じゃない」