新潟県阿賀町の護徳寺観音堂の数ある落書きのなかには、次のようなものが見える(読みやすくするため、一部ひらがなを漢字に改めた)。

 水沢住人・津河住人二平弥五郎[  ]天下一の若もじ様[  ]今生来世のために一夜臥(ふ)し申したく存じ候。

 なにせ落書きなので、すでに文字が擦れて読めなくなってしまっている部分もあるのだが、「若もじ様」とはイケメンの美少年を意味する。
つまり、「天下一のイケメンと、現世来世の思い出として一晩でいいから一緒に寝たい」と書かれているのだ。
「二平弥五郎」が美少年をさすのか、それともこの願いを書いた本人なのかはわからないが、書いた主は間違いなく男性で、美少年との同性愛を祈願した内容である。

 こうした同性愛の熱い思いを綴った落書きは決して珍しいものではなく、他にも数多く各地で確認されている。いくつか列記すると、

「若もじ様、恋しや、のふのふ(イケメン恋しい、あぁ)」(護徳寺)

「せめて一夕お情けうけ申したく候(せめて一晩お願いします!)」(同)

「あらあらしりしたや、のうのう、あわれよき若もじ(ああヤリたい、あぁ、カッコいいイケメン)」(松苧神社、新潟県十日町市)

「御結縁のために、仁四郎様、したやしたや(結ばれますように、仁四郎様、恋しい恋しい……)」(同)

https://www.fsight.jp/articles/-/48408