「北陸応援割」馳知事の延期示唆に波紋 優先すべきは観光支援?被災者対応?

能登半島地震の被災地の観光復興支援「北陸応援割」の開始時期について、石川県の馳浩知事が福井、富山両県より遅らせる可能性を示した発言が波紋を広げている。ホテルや旅館に避難している被災者がいる現状を踏まえた対応だが、地震で打撃を受けた観光関係者からは、早期の開始を望む声もある。

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北陸応援割は石川、新潟、富山、福井の4県を対象にした国の支援策。1泊当たり2万円を上限に旅行代金を50%割り引く。3月16日に北陸新幹線の福井・敦賀延伸が控える中、3~4月の実施が想定されてきたが、馳知事は14日、「石川は被災の度合いも大きい。富山、福井と一緒にやりたかったが、できない」と述べ、県独自に開始時期を検討する考えを示した。
 石川県加賀市の加賀温泉郷協議会の和田守弘会長によると、北陸応援割の発表以来、予約の問い合わせが相次ぐ。「本音では今すぐにでも始めてほしい。期待だけさせて、石川だけ延ばすとなると、非常に残念だ」。北陸新幹線の延伸効果を期待し、「富山、福井が先に北陸応援割を始めると、観光客が流れてしまう」と危惧する。
 宮元陸市長も、温泉地が被災者受け入れに協力してきたことに触れ「苦労をかけてきたにもかかわらず、希望を消し飛ばしてしまう」と馳知事の発言に疑問を投げかける。市内の旅館などに約1800人の被災者が滞在するが、宿泊施設の収容人数は1万2千人以上。「被災者支援と観光需要の取り込みは両立できるはずだ」と語る。
 一方、小松市の粟津温泉観光協会の桂木実会長は「2、3カ月延ばせばいいのではないか」と歓迎。「被災者優先で判断をしてほしい」と語った。
 旅館やホテルに滞在する避難者の意見もさまざまだ。輪島市から小松市の粟津温泉の旅館に身を寄せる谷政義さん(86)は「今日にでも帰りたいが、戻っても生活ができん。7月まで旅館にいられるなら安心できる」と話す。輪島市から加賀市山代温泉の旅館に避難する女性(63)は「いつ始まろうと、私たちが早く戻れるわけではない。被災者がいる空間で、観光客の人たちは本当に楽しめるのか。申し訳なくなる」と複雑な心境だ。
 観光関係者の懸念を踏まえ、馳知事は15日の会見で再度、応援割について言及。富山、福井との一斉開始が難しいことは認めつつ、「そう遠くない段階で石川県もスタートしたい。万が一、遅れたらその分、(期間の)後ろを延ばす要請も観光庁にしたい」と理解を求めた。