メッシにボイコットされた中国の激怒の中身、プライドだけでなく、香港浮揚の国策「盛事経済」を出鼻で踏みにじられる

(前略)

「傷つけられ」激発する中国ナショナリズム

 それに対し、香港と中国本土の両方からは激しい反発が巻き起こった。メッシが香港欠場の理由として「内転筋の怪我」と釈明しているが、「ならばどうしてその直後に東京で出場したのか」との疑問が発せられ、メッシはわざと「香港蔑視」「中国蔑視」をやっているのではないかとの批判が広がった。

 2月7日、香港特別区政府はわざわざ声明を発表。メッシの香港戦欠場に強い疑問を呈したと同時に、インテル・マイアミにさらなる釈明を求めた。そして李行政長官は定例の会見では不快感を露わにしても主催者側に非難の矛先をむけた。立法会の何君堯議員はSNSでメッシの欠場と李行政長官との「握手回避」を取り上げて「香港への侮辱、中国への侮辱」だと非難。香港行政会議召集人の叶劉淑儀はメッシのことを「虚偽」だと批判の上、二度と香港に入れてはならないとまで放言した。

 その一方、中国国内では、「香港に冷たくて日本に温かい」というメッシの姿勢を「侮華=中華侮辱」の表れだと捉え、「メッシ批判」の嵐が吹き荒れた。こうした中で人民日報系列の環球時報は2月8日、社説までを掲載してメッシの行動を激しく批判する一方、その背後に「政治的動機があるのではないか」と詮索した。そして、3月に予定されていたアルゼンチン代表の杭州でのナイジェリア戦、北京でのコートジボワール戦の2試合が中国側によってキャンセルされた。

 メッシというスポーツ選手のとった一連の行動は香港と中国の両方で大きな反発を起こして一大政治事件に発展する勢いとなっているが、その背後にあるのはまず、「傷つきやすい」ことを特徴とする現代中国人の過剰な「ナショナリズム感情」と、コンプレックスの裏返しとしての過剰な「民族自尊心」ではないのか。そしてメッシが日本で取った友好的態度はまた、こうした過剰感情に火に油を注ぐ効果を発揮した。

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