カナダは「アメリカとよく似た北米の国」といわれていますが、実際はかなり性質が違います。アメリカと違う点としては、人種差別がアメリカほど激しくないこと。そして、排外的な動きが部分的に留まることです。

 アメリカと同じく戦時中の日系人強制収容といった歴史もありますが、全体として人種差別は少ない。これがカナダ人の友人や、カナダに詳しい人たちと議論を重ねた私の見解です。

 人種差別が少ない「理由その1」は、奴隷制度の爪痕の影響がほぼないこと。アメリカ南部の大農場経営といった産業がそもそもカナダにはなく、黒人はもともと少なかったようです。19世紀には、人種差別を逃れるためにカナダに移った人もいます。人種差別に揺れる隣国アメリカを反面教師にした面もおそらくあるでしょう。

 もっとも、奴隷制度の爪痕がほとんどないからといって、現在カナダに居住している黒人への差別がないとはいえない点には注意が必要です。

「理由その2」は、フランス文化圏が強固に存在していること。ケベック州など国の半分はフランス文化圏で、これがカナダが多文化志向になっていく源です。今でも公用語は英語とフランス語で、モントリオールはまずフランス語。日本人が思うよりフランス語が強い社会です。

 国際NGOでも、たとえば、アムネスティ・インターナショナルは、通常は1国1支部ですが、カナダには英語支部とフランス語支部の二つが併存しています。いかにフランス語文化圏が強固に存在しているかわかります。
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