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トランプ氏再選の可能性を警戒する欧州、好機ととらえる中国
ミュンヘン安全保障会議で演説する中国の王毅(ワンイー)外相/Johannes Simon/Getty Images
2024.02.21 Wed posted at 21:04 JST
香港(CNN) 中国の外交トップ、王毅(ワンイー)政治局員兼外相は先週末、欧州各国の外相にメッセージを送った。世界情勢がどれほど変化しようとも、中国は「一貫性と安定性」を保ち、「安定をもたらす力」になるだろうと。
17日のミュンヘン安全保障会議での王氏の発言は、欧州各国が米国の大統領選挙を不安な面持ちで見つめる中で行われた。ドナルド・トランプ前大統領が再選することになれば、米国政府と協力関係が一変するのではないかと欧州は懸念している。
防衛費の拠出が不十分な北大西洋条約機構(NATO)加盟国を守るつもりはないとトランプ氏が発言したのを受け、ここ1週間で懸念はさらに増した。ロシアのウクライナ侵攻が続く中、欧州にとってはまさに寝耳に水だった。
トランプ氏が発言したタイミングは、王氏にとって願ってもないチャンスだったに違いない。王氏の欧州訪問の裏で、中国政府は悪化しつつある欧州連合(EU)との関係修復に苦慮している。国内経済の低迷と継続する米中摩擦に苦しむ中国にとって、EUとの関係修復は喫緊の課題だ。
王氏はミュンヘンで「世界情勢がどれほど変化しようとも、中国は責任ある大国として主要原則や政策で一貫性と安定性を保ち、激動の世界に安定をもたらす確固たる力となるだろう」と発言し、中国と欧州は「地政学的・思想的な雑音から距離を置いて」ともに協力すべきだと呼びかけた。
こうした王氏の呼びかけは、各方面で対中関係の安定化を望む欧州の一部の政府には響いたかもしれない。だが関係修復を実際に前進させる上で、中国政府は大きな問題を抱えていると専門家は言う。ロシア政府との揺るぎない関係だ。
こうした障壁は先週末のミュンヘンでも色濃く表れた。刑務所に収監されていたロシアの反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏が47歳で死亡したという知らせが届くと、安全保障会議には衝撃と怒りが影を落とした。
各国首脳はナワリヌイ氏の死をプーチン政権の仕業だと非難。ナワリヌイ氏の死に対する怒りでウクライナの運命を憂慮する声はさらに高まった。16日にはウクライナはロシアから要衝を奪われた。
「王氏は会議を開催した欧州諸国に対し、地政学的な意見の相違で密な協力関係を阻害してはならないとのメッセージを発信した」と語るのは、米シンクタンク「ジャーマン・マーシャル財団(GMF)」の客員シニアフェロー、ノア・バーキン氏だ。
「はっきり口にはしていないが、欧州がもっとも懸念する中国の立場や政策、すなわちロシアとの関係強化やゆがんだ貿易政策を、中国は変えるつもりはないと暗にほのめかしている」(バーキン氏)