株価一時最高値も「好景気」実感できず バブル期の34年前から変わった経済と社会構造

22日午前の東京株式市場で日経平均株価が平成元(1989)年12月の史上最高値(終値ベース)を一時、更新した。だが、バブル景気に沸いた34年前のような好景気の実感はない。人口増と内需拡大への期待から国内で幅広く循環したマネーは、少子高齢化と企業のグローバル化に伴い成長余地の大きい海外へ流れた。

企業は金融危機や災害、地政学などのリスクに備えて利益をため込み、リストラで収益を上げる傾向を強め、従業員の賃上げに回りにくくなった。一方で社会保障費を賄うための負担は増え続け、旺盛だった個人消費は減退。株高が景気に直結しない経済構造が定着した。

■バブル期の経済成長なく

平成元年と現在の経済情勢を比較して、大きく異なるのは国の経済規模や景気動向の指標となる国内総生産(GDP)成長率だ。

当時は物価変動を除く実質で前期比約5%の成長率を維持していたが、直近は0%台に停滞し、マイナスになることも珍しくない。今月15日に発表された令和5年10~12月期の実質は前期比0・1%減少し、当時は世界2位だった物価影響も含めた名目GDPはドル換算でドイツに抜かれ4位に転落。低迷ぶりが際立つ。

GDPは約6割を個人消費が占めており、成長率の停滞は消費の弱さを意味する。バブル期は経済成長に支えられ、幅広い業種にその恩恵が広がった。大企業と中小企業の賃上げ率に格差はなく、多くの企業で現在よりも2ポイントほど高い5%程度で実施された。当時、高級品を買いあさり消費を謳歌した若者の姿は、今や訪日客に取って代わられている。

■景気悪くても株高に

もうひとつ大きな相違点は、企業の収益構造の変化だ。当時、5割に満たなかったトヨタ自動車の海外販売比率が現在は8割を超えたように、大手企業は少子高齢化で成長期待が薄まった国内ではなく、成長余地の大きい海外で稼ぐことで収益性を高めた。

第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは「現在の国内企業の株価はグローバル化した企業の実力であり、日本経済のファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)を反映するものでなくなった」と指摘。国内景気が悪くても、海外での収益性が高まれば株価は上昇するようになり、「バブル期の『日本の景気=株価』だった情勢とは経済活動や収益の範囲もずれてきている」と分析する。

34年前は5%に満たなかった日本株の外国人保有比率も今は30%を超え、株価高騰の恩恵の多くを海外投資家が受ける。国内では株式を保有する一部の富裕層や高所得者は潤うが、恩恵は一般的なサラリーマンまで波及せず、格差が広がる。
https://www.sankei.com/article/20240222-2NG5LHYJF5A5HONXWEOLJCNGIQ/