あるとき、渡河作戦の最中に流れ着いた戦友の遺体を踏んだそうです。
博多弁で言うと、「靴がいぼる(埋まる)ったい、腹の中に」。内臓が腐ってズブっと腹に入るんでしょうね。その悪臭と無残さ。

 捕虜になって、ネギばかり食わされたそうです。過酷な記憶がよみがえるのか、料理にネギが入っていると怒る怒る。

「中国の匪賊(ひぞく)のヤツらを、日本刀で何人か斬った」と自慢することもあった。
首を切り落とす快感を話すおやじが、本当に嫌で嫌で。母ちゃんはおやじの横で静かに首を振っていました。
おやじと周囲には、「断層」がありました。

彼の夢は、大日本帝国の勝利だったんです。敗北によってアメリカの時代がやってきて、それに対する不満と怒りが渦巻いていたんでしょう。
おやじの戦後は、皇居前で正座したまま、その姿勢のまま終わっていったんじゃないですかね。

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