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中国のソーシャルメディアで「キリン」が検閲の対象に
https://www.businessinsider.jp/post-282339
アメリカ大使館のキリンの投稿がなぜか、中国のネット上で大きな話題になった。
問題の投稿には、中国経済に対する不満のコメントが20万件近く付いていた。
すぐに検閲が介入し、現在キリンは中国のインターネット上の次なる絶滅危惧種になりつつある。
中国のソーシャル・メディアでは、キリンが次なる投稿禁止事項になるかもしれない。
キリンが、一夜にして中国経済に対する不満の象徴となった。北京にあるアメリカ大使館のソーシャル・メディア・アカウントが2月2日、キリンについての投稿をアップしたからだ。
投稿の内容は、中国についてではなく、GPSを使ってアフリカで絶滅の危機に瀕しているキリンを追跡する、アメリカの取り組みをアピールするものだ。
空席の椅子もプーさんもNG。権力集中の習近平体制で強まる中国のネット規制
だが、中国のX的存在であるウェイボー(微博)上で、この大使館の投稿がなぜか話題となり、2月6日夜の時点で、「いいね」97万件、コメント18万件という状態になった。通常、アメリカ大使館の投稿が獲得する「いいね」の数は3万件以下だ。
投資家たちがこのキリンの投稿に殺到し、中国の低迷する株式市場に対する不満をコメントしたとブルームバーグ、CNN、ロイターが報じた。
中国の株式指数であるCSI300は、長かったコロナ禍に耐えた後、個人消費への信頼が弱まる中で暴落していた。中国の株式市場は2021年以降、6兆ドル(約895兆6800億円)以上の価値を失い、1月に北京政府が10回近く介入したにもかかわらず、下落を続けていた。
あるユーザーは「怒りは極限に達している」とコメントしたとブルームバーグは2月3日に伝えている。
「アメリカ政府よ、中国の株式投資家たちを助けてくれ」と別のユーザーの話をCNNは2月5日に伝えている。また別のユーザーは「立ち上がれ! 奴隷となることを拒むすべてのキリンたちよ」と、中華人民共和国国歌になぞらえて書いたとCNNは報じた。
怒りのコメントをした人々は、キリンの投稿と同日に公開された、国営メディアの記事の「国全体が楽観主義で満たされている」という大見出しをコピペしていた。
CNNによると、あるユーザーは「キリンのコミュニティ全体が楽観主義で満たされている」と書いた。
ウェイボーのモデレーションや検閲が厳しいのは、中国人ユーザーが皮肉や匂わせに頼って不満を表すことが多いからだ。こうした言及を検閲する取り組みの結果、いたちごっこになり、白紙による抗議や、「彼」「あの男」という言葉の禁止といった理不尽なことになりかねない。
「クマのプーさん(Winnie the Pooh)」は中国にとって、センシティブなテーマとして悪名高い。反体制派が習近平国家主席を、太ったクマに例えることが多いからだ。同様に、ペッパ・ピッグ(Peppa Pig)もソーシャル・メディアから追放され、反体制文化の象徴になった。
ウェイボーらしく、キリンの苦情パーティーは閉鎖された。2月6日の夜には、そうしたコメントは消え、代わりに米中の友好関係を望む声が相次いだ。
多くが「中米友好。中国万歳」といったコメントだった。
一般的な不満を表す漠然としたコメントはそのまま残されたが、議論の大半は平凡なものになった。
「アメリカには、生態系のバランスを守るために、より多くの技術と資源を投資する義務と責任がある」というコメントには、2万4000件の「いいね」が付いた。
「『コメントと株』という言葉が消されるかどうか見てみよう」というコメントもあった。これに対し38件の返信があったが、そのうち36件は閲覧できなかった。
キリン関連の#TheGiraffeIncidentのようなハッシュタグのいくつかはブロックされていると検閲追跡サイトのチャイナ・デジタル・タイムズ(China Digital Times)が最初に報じた。しかし、普通のキリンがウェイボーで全面的に禁止された訳ではない。
Business Insiderがこのハッシュタグを確認したところ、「関連する法律、規制と政策により、このトピックの内容は表示されません」と表示された。
このハッシュタグの主なコンテンツが抑圧されたため、現在は動物園での動物の扱いについて苦言を呈する投稿がトップになっている。
キリンの検閲について議論する投稿のいくつかは、ウェイボーに残されている。
「キリンはもう保護されていないようだ」と、ある人は書いている。