学校 何度も同様事故 報告不徹底 原因・対策 共有進まず
https://www.yomiuri.co.jp/shimen/20240226-OYT9T50243/ 安心して学べるはずの学校で、児童生徒が死亡したり、重傷を負ったりする事故が繰り返されている。文部科学省は学校事故の対応に関する指針を改定し、学校や教育委員会に対して事故報告と調査の徹底を図る。国と学校現場が一体となり、再発防止に取り組むことが求められている。(教育部 古郡天、杉木雄斗、本文記事1面)
■悔やむ遺族
「ゴールポストが固定されていたら、命が失われることはなかったのかと思うと……。この気持ちは言葉では表せない」。2017年1月、福岡県大川市の市立川口小学校で体育の授業中に、当時4年生の息子を亡くした梅崎貴文さん(44)は、そう語る。
サッカーの試合中、味方の得点に喜んだ息子はゴールのネットにぶら下がった。息子はバランスを崩して転び、その直後に倒れてきたゴールポストの下敷きになった。ポストを固定するロープが外れていた。同校は毎月、校内設備の点検を実施するとしていたが、担当教員が点検用紙の配布を忘れ、3か月間、未実施だった。
梅崎さんは昨年、市教委と「学校安全リーフレット」を作成した。市内の小中学校では、児童生徒も体育設備などを点検するようになった。梅崎さんは「学校と住民、行政が一体となって同じような事故を止めないといけない」と訴える。
■「コピペ事故」
大川市の事故翌年の18年、学校でけがなどをした児童生徒らに見舞金を支払う日本スポーツ振興センター(JSC)は、ぶら下がったことによるゴールポストの転倒事故を洗い出した。13~15年度には60件起きており、死亡事故もあった。
その後も事故は続き、18年には静岡市と山梨県南アルプス市の中学校で、強風でゴールポストが倒れ、生徒がけがをしている。全国では、中学生が失明する事故も報告されている。
校舎からの転落やプールへの飛び込みで体を強く打ち付けるなど、学校で起きる事故には何度も繰り返されてきた「典型例」がある。文章をコピーし、別の場所にペースト(貼り付け)するパソコン作業になぞらえ、学校事故を「コピペ(コピー・アンド・ペースト)事故」と呼ぶ専門家もいるほどだ。