航空大手ボーイングが直面する「熟練工の消滅」とトラブル頻発の関係

■「熟練工」の消滅

労働者たちの年齢構成の変化は、シアトル地域のボーイング工場労働者を代表する3万1000人の組合員にも現れている。組合幹部がバンク・オブ・アメリカのアナリストに語ったところによると、コロナ禍以前は半数以上が6年以上の経験を持っていたが、現在は、同様のキャリアを持つメンバーの比率は25%以下であるという。

ボーイングは2020年に、コロナ禍の影響で新型機の需要がほぼ完全に崩壊したことを受け、2万8000人の労働者を解雇した。しかし、その後は工場が再び軌道に乗ったことで、2021年から2023年にかけて5万5800人を新たに雇用した。

アーンスト・アンド・ヤング(EY)で航空宇宙・防衛関連企業のコンサルタントを務めるラマン・ラムは、航空業界全体で、書き留めることができない専門知識を持つ年配の労働者たちが職場を去ったと述べている。その結果、工場におけるトラブルが増加したと彼は言う。「工場内の新入社員の割合が増えれば、3カ月後には品質問題が発生する確率が高い」とラムは指摘した。

熟練工の経験がさらに重要

737MAXの組立ラインでは、熟練工の経験がさらに重要になるかもしれない。1960年代にデビューした737の最新版である737MAXを担当する作業員は、787型機やエアバス機のような近代的な旅客機の製造に使用されるロボットなどの自動化ツールに頼れない。ボーイングを退社後にFoundation for Aviation Safety(航空安全財団)という団体を運営するピアソンは、「737MAXは基本的に手作りだ」と語った。

さらに、スピリット社やボーイングの組立整備士は、自動車産業よりもはるかに反復性が低く、標準化もされていない方法で、作業を行うという困難に直面している、とコリアーは語る。「一日中ドリルで穴をあけたり埋めたりしていても、すべて同じ穴ではありません。角度が違ったり、材質が違ったりするのです」と彼は続けた。

連邦航空局(FAA)のマイク・ウィテカー長官は先日の議会の公聴会で、監視の強化を約束し、ボーイングにはより多くの人員が必要だとの見解を示した。FAAは737MAXの工場に20人、スピリット社に6人の検査官を派遣し、両社の製造工程を監査している。また、ボーイングに対し、同局が許可するまでの間、MAXの増産を禁じている。

しかし、FAAがボーイングとサプライヤーに品質検査官の増員を求めたとしても、問題はすぐには解決しないとコリアーは述べている。

(抜粋)
https://news.yahoo.co.jp/articles/64f2c32bc6f3678e1e560046c67b6a761d54864d