ここまで株価をEPS×PERという観点で見てきたが、株価は“経済の鏡”という観点で幾つか注意しておく点があると思っている。それは日本の上場企業は製造業比率が高いという点だ。日本の経済活動別GDPを見ると2022年で製造業は19.2%(名目)を占めているが、東証プライム市場では製造業の時価総額占率は53.7%(2024年1月末)。日経平均株価採用銘柄で見ると指数計算ベースで約61%が製造業だ。製造業は非製造業に比べどうしても景気循環に敏感なので日本の株式市場が“グローバル景気敏感市場”と言われる所以だ。

やはり株式市場は日本経済の全身を映す姿見ではなくもう少し小さな鏡の一つであるということには注意が必要だろう。上場企業と重なる部分も大きい日銀短観による「海外での事業活動」調査によれば調査対象企業のうち製造業の2023年度(計画)海外売上高比率は58.3%、非製造業は27.8%、全産業では44.9%。製造業は1990年代から海外展開は拡大してきたが、海外展開を進めたからこそ収益も拡大してきた面がある。生成AIの爆発的普及で半導体関連企業に注目が集まるが、そうした企業の海外売上高比率は軒並み80%を超えている。日本の株式市場は海外経済、海外株式市場の影響を色濃く受けるということであり、今や当たり前だが日本の株式市場は海外の動きに振らされることは認識しておく必要がある。

https://www.dlri.co.jp/report/macro/321951.html