https://news.yahoo.co.jp/articles/23fcd62aae1d4a2fde82e27cc9540d2588235e63

「時短勤務 いつまで」検索する女性たち 令和に見えてくる課題


写真はイメージ(アフロ)

LINEヤフーの検索データで「時短勤務 いつまで」の検索数が2〜3月に増える傾向がある。新学期を前に関心が高まっていることがうかがえる。厚生労働省の調査によると、時短勤務利用者がいる事業所では「女性のみの利用」が94%。女性だけが時短勤務を取って育児と仕事の両方を担っている現状が見えてくる。企業は取れる期間を延長する傾向にあり、小学校入学以降も取得可能な事業所の割合が増えている。共働きの家庭がおよそ7割を占める令和の時代に適した時短勤務とは。専門家の意見や企業の動き、利用する人のリアルな声をもとに考える

利用者のリアルな悩み「仕事が終わらず家で残業、子がチックに」

「『ここは時短の人が来る場所じゃない』と直属の上司が言っていたのを聞きました。お昼をとらずに働いても仕事が終わらなくて、シッターさんにお迎えを頼むこともありました。時短勤務だとお給料が減るので、シッター代を会社の福利厚生や自治体の補助でまかなっても毎月収支がトントンくらい。家で残業することも多く、いっぱいいっぱいの生活をしていたら子どもにチックの症状も出てきました。いったいなんのために働いているんだろうと涙が出る日も多かったです」

こう話すのは、東京都在住で、保育園に通う4歳と6歳の子どもを育てながらメディア関係の仕事をする佐藤理香さん(仮名)。4年間の産休・育休を経て、下の子が1歳半のときに時短勤務を取得して復職。夫婦共働きで、実家は地方にあるため両親を頼ることもできない。佐藤さんは、時短勤務を利用しても仕事と育児の両立は難しいと話す。

「出社が必須な職場なのですが、時短勤務を外してしまうと、遅くまで職場にいるべきだと思われてしまう。一方で取得していても、求められている成果や責任の重さはフルタイム勤務と同じ。取れば働きやすくなるというものではなかったです」

LINEヤフーの検索データによると、2021年以降、2〜3月にかけて「時短勤務 いつまで」というワードの検索数が上がる傾向にある。4月から始まる子どもの新学期を前に、いつまで続けるべきか、あるいはいつまで取れるのか、といった関心が高まっていることがみてとれる
働き方改革の前段階で生まれた制度
作成:Yahoo!ニュース オリジナル 特集

そもそも時短勤務制度(短時間勤務制度 以降、時短勤務)とは、2009年の育児・介護休業法の改定で、3歳未満の子どもを育てる従業員が希望すれば、労働時間を1日原則6時間に短縮できる仕組みを企業に義務づけたものだ。短縮した勤務時間の賃金はおよそ8割の事業所で無給となっている。この制度は、なぜ作られたのか。労働経済学が専門で、女性のキャリア研究を行う日本女子大学名誉教授の大沢真知子さんに聞いた。

大沢真知子さん

「女性の労働力率(15歳以上人口に占める労働力人口の割合)は30代前半でいったん下がります。結婚や出産で仕事を辞めてしまう人が多いので、働く時間を短くすれば仕事を続けていけると見込んで、国は企業に措置を取らせました。なぜ3歳未満だったかというと、保育園不足で特に空きが少ない0〜2歳の年齢のお子さんを持つ方が取得しやすい条件にしたと思われます。働き方改革の前段階で生まれた制度です」

小学校入学以降も時短を取れる事業所が増加している
時短勤務制度がある事業所を100としたときの、それぞれの割合を示している。

厚生労働省が、時短勤務制度がある事業所に最長いつまで取得できるか(最長利用可能期間)を調査した結果、2017年度に、小学校入学以降も取得できる事業所の割合が20%を超え、「小学校入学まで」と回答した事業所を逆転。以降も増え直近では26.1%に達している。「小学校入学まで」や法定通りの「3歳未満」は減少傾向だ。大沢さんは、企業のこういった動きを「女性を活用するための現実的な解決策」だと話す。

「女性の力を活用しないと成り立たない背景があると思います。働く女性の割合が増えてくると女性の管理職がいないままでは働きやすくならないし、職種によっては女性の力が重要視されるところもあります。とはいえ、お子さんが小さい頃はいろいろなケアが必要だという声は根強いので、女性に長く働き続けてもらうために制度を利用できる子どもの年齢を企業が自主的に引き上げているんだと思います」

小学校卒業まで時短を取れる企業、制度変更で利用者10人増加 取得9年目の人も