温泉入浴で腸内細菌に変化、疾病リスク改善 実証実験結果発表
温泉の泉質、性別で異なる疾病リスク減少

別府市
2022年12月3日 10時00分
九州大学都市研究センター(所在地:福岡市 センター長:馬奈木 俊介)は別府市、別府市旅館ホテル組合連合会と包括連携協定を結び、温泉に一定期間入ることに健康効果があるかどうかを測定する「免疫力日本一宣言」実証実験を実施してきました。この実証実験で、温泉の入浴によって「疾病リスク」と「※腸内細菌叢」に変化が生じることを証明しました。
※腸内細菌叢(そう)(腸内フローラ):腸内に生息している多種多様な細菌が、バランスをとりながら腸内環境を良くしており、腸内フローラとも呼ばれます。
1. 背景
2021/4/30に締結した別府市、別府市旅館ホテル組合連合会との包括連携協定の元、九州大学都市研究センターは温泉入浴による健康効果について、腸内細菌叢のゲノム解析技術を利用して、その効果の測定を行ってきました。温泉入浴による健康効果については、以下の仮説があります。1)泉質別に様々な健康効果があるとされ、また毎日入浴することで心筋梗塞に代表される虚血性心疾患や脳卒中の発症数が減る、2)温泉入浴により、発症「予防効果」の促進がされている。しかし、温泉入浴による医学的な健康効果はまだ未解明の部分が多く残されています。「免疫力日本一宣言」実証実験では、参加者140人に泉質が異なる温泉に一週間入浴してもらい、その入浴前後の腸内細菌叢をゲノム解析し、その解析結果から温泉入浴の健康効果を科学的に実証しました。本発表では、その結果を報告します。
※生物のDNAがもつ遺伝情報を総合的に解明することです。
※別府市には10種類ある掲示用泉質のうち、7種類の泉質が確認されています。

2. 分析結果
腸内細菌叢のゲノム解析結果から得られた参加者の実験参加前後の疾病リスク値の平均値の差の変化を分析しました。分析の軸としては、参加者が入浴を行った5つの泉質の温泉「塩化物泉」・「単純温泉」・「炭酸水素塩泉」・「硫黄泉」・「硫酸塩泉」と男女別・年代別で分けました。
入浴前後で疾病リスクが減少した疾病は泉質別・男女別で下表の結果となりました(表2)。この一覧から分かるように、泉質別・男女別で異なる疾病リスクの減少が見受けられます。疾病リスクの変化に統計的な有意な結果が出たものとしては、単純温泉に男性が入浴すると「過敏性腸症候群」の疾病リスクが有意に減少することが判明しました(図1左)。また男性の50歳未満では5つの泉質の温泉のどれかに入浴することで「通風」の疾病リスクが有意に減少することが判明しました(図1右)。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000011.000050335.html