「押しつぶされてしまう!」。石川県輪島市の漁師、橋本拓栄さん(51)はとっさに家の窓を割って、外に飛び出した。追い掛けるようにして自宅が潰れる。

 最大震度7を記録した能登半島地震。被害が大きかった奥能登でも輪島市の惨状は目を覆わんばかりだ。

 発災から2カ月が経過するというのに、被害の全容はつかみ切れていない。2024年2月28日時点の石川県の集計では、輪島市の死者は102人(うち3人が災害関連死)。同市の住宅損壊は1万2548棟を数え、うち全壊が3318棟に及ぶ。ただ、この数字は発表のたびに増えている。輪島市の1月1日時点の人口は2万3118人、1万1357世帯であることを考えると、いかに多くの世帯が被災したことか。

 あの日、人々の運命は一瞬で変わった。橋本さんもそうだった。

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