岸田文雄首相は、今月20日に検討していた韓国訪問と尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領との首脳会談を見送る方針を決めた。日韓両政府が1日、月内の日韓首脳会談を否定した。首相は首脳同士が相互訪問するシャトル外交の一環として訪韓を模索したが、自民党派閥の裏金事件への対応や、韓国側が4月に総選挙を控えることなどを背景に、環境が整わないと判断した模様だ。
森屋宏官房副長官は1日の記者会見で「20日に岸田首相が訪韓する計画はない」と語った。韓国大統領府高官も1日、「3月中に韓日首脳会談を開催する計画はない」と明らかにした。
両首脳は2023年5月に韓国で会談し、12年ぶりにシャトル外交を再開。同月以降、首脳会談を重ねてきた。首相側は、韓国で18~20日に予定される米国主導の「民主主義サミット」に合わせて訪韓し、軍事的挑発を続ける北朝鮮への対応などを尹氏と協議することを模索していた。
20日にはソウルで米大リーグの開幕戦が開催され、大谷翔平選手など日韓両国選手の出場が見込まれることから、両首脳が試合を観戦する案も浮上していた。しかし試合観戦案を巡っては、能登半島地震や自民派閥の裏金事件への対応がある中で「不適切では」との批判も一部で起きていた。
訪韓見送りには、4月10日投開票の韓国総選挙への影響を避ける狙いもあったとみられる。韓国高官は「政治的条件にこだわらず、お互い楽な時期に行き来するのがシャトル外交の精神」と説明した。