
1950年代、米国空軍は “平均的な人間 “を対象に航空機を設計した。平均的な身長、平均的な腕の長さ、その他いくつかの重要な寸法に沿って平均的に設計された飛行機は、ほとんどのパイロットにとって機能するだろうと想定していた。
この決定は、1日に17人ものパイロットが墜落する一因となった。”平均的な人間”」”であれば飛行機を完璧に操作できるが、実際のばらつきが邪魔をした。背の低いパイロットは視界が悪くなり、手足の長いパイロットは体にフィットさせるために体を縮めなければならない。
空軍は、ほとんどのパイロットがすべての主要な寸法において平均に近いと想定していたが、4,063人のパイロットのうち、平均的なパイロットはゼロであることが判明した。
空軍は、パイロットのばらつきを考慮し、調整可能なシートを設計することで問題を解決した。
調整可能なシートは今では当たり前のように思えるかもしれないが、この「平均的な人間」という考え方は今日でも問題を引き起こしている。米国では、自動車事故で重傷を負う確率は女性の方が約50%高い。
政府会計検査院は、この格差の原因を、空軍の “平均的な男性”と同じように、男性ダミーを縮小したものを使って女性の乗員を粗雑に表現している衝突試験のやり方に求めている。最初の女性衝突試験用ダミーは2022年に導入されたが、米国ではまだ採用されていない。
平均値は有用だが、限界がある。真の値の推定やグループ間の比較には、平均値が威力を発揮する。しかし、実際のばらつきを示す個人に対しては、平均はそれほど意味を持たない。
https://texal.jp/the-average-revolutionized-scientific-research-but-overreliance-on-it-has-led-to-discrimination-and-injury/