岸田文雄首相は4月に予定する国賓待遇での訪米の際に、南部ノースカロライナ州を訪れる方向で検討していることが分かった。ただ、同州は民主党と共和党の支持率が拮抗(きっこう)する「スイング・ステート(激戦州)」の1つ。ジョー・バイデン大統領(民主党)との首脳会談後に訪問すれば、大統領選に結び付けられる危険もある。共和党の大統領候補指名争いで独走するドナルド・トランプ前大統領からは「敵認定」されかねない。

【写真】高齢不安が広がっている81歳のバイデン氏

注目の訪米は4月9~14日を軸に調整中。10日にバイデン氏と首都ワシントンで会談するほか、滞在中には日本の首相として2015年の安倍晋三元首相以来となる米議会での演説も予定している。

ノースカロライナ州への訪問は、ワシントンでの日程後とみられる。同州では、トヨタ自動車が電気自動車(EV)などに搭載する電池の生産工場の建設計画を進めており、雇用創出や投資による米国への貢献をアピールする狙いがあるとみられる。

ただ、気になるニュースもある。

ロイター通信(日本語版)は1月19日、「バイデン氏が大統領選でノースカロライナを重視 経済政策アピール」という記事を報じている。

1980年以降の大統領選で、民主党がノースカロライナ州を制したのは2008年のバラク・オバマ氏の1回だけで、バイデン氏は「大統領選に勝利するための重点地域の一つに定め(た)」というのだ。

バイデン氏は再選を目指しているが、国内の支持率は低迷し、世論調査でもトランプ氏にリードを許している。

岸田首相は2月28日、東京都内で開かれた日本国際問題研究所主催のシンポジウムであいさつし、4月の日米首脳会談では「日米で世界の経済成長を牽引(けんいん)する方策についても議論したい」と述べた。

トランプ氏は、首脳会談やノースカロライナ州訪問をどう見るか。

福井県立大学の島田洋一名誉教授は「米大統領選で、トランプ氏優勢が伝えられるなか、岸田首相がノースカロライナ州を訪問すれば、バイデン政権側の経済政策アピールに加担する動きにも見える。トランプ陣営からは恨みを買いかねない。このタイミングで接戦州を訪問するのは短絡的で、近視眼的な行動ではないか」と警鐘を鳴らした。

https://news.yahoo.co.jp/articles/2efbb9c22fb1475a2a94ff9f2bec8056e901d467