
日本は「先端IT人材」を集めただけでは成長しない…これから求められる「能力」とは?
(中略)
求められる能力は、データ解析力
DXは、先端IT人材をたくさん集めただけで事足りるわけではない。
専門組織をつくったものの、経営戦略にまで落とし込めていない企業は多い。経営課題とデジタル技術を結びつけて説明できる「ビジネストランスレーター」という人材が不在なためだ。DXを活かしていくには、技術開発に直接携わらない一般の社員も、DXの利便性や「DXによってどのようなことができるようになるか」といった事業の展望をしっかりと理解していなければならないのである。
DXが進めば、異分野の企業が連携して全く想定していなかったビジネスへの転換を迫られることにもなり得ると先述した。だが、DXの基盤だけ整えてみても、ビッグデータの解析やマーケティングに活用するという発想がなくて使いこなせないのでは、「IT化」と同じく作業の省力化や効率化を実現するだけにとどまり、ダイナミックなビジネスの発展に結びつけるチャンスを見逃す。これでは宝の持ち腐れだ。
そうならないようにするには、既存の戦力がDXのセンスを身に付けられるようにすべく、「リスキリング」(再訓練)をすることだ。仕事の在り方を根本から変革するDXが「新たな業務」を生み出すことはすでに述べたが、リスキリングは新たな業務へと移る人にとっても不可欠である。
各企業とも、“従来型のIT人材”はもとより、仕事がなくなる職種の人々を一刻も早く「新たな業務」の戦力として育成することが求められているのである。
というのも、少子高齢化で若い世代が減っていくからだ。さらには、多くの企業がDXに乗り出し、それぞれで新たな業務が創出されるのである。新たに業務が創出されるたびに新規採用をしようにも、若い世代を集めることは簡単ではない。DXで仕事を奪われた人をすべてリストラするのは、大きなリスクを伴うということだ。
それよりも、まずは自社社員にしっかりとリスキリングを行うことで、新たな「適材」として再生させて「適所」にコンバートさせたほうが効率的であろう。
例えば、今後求められる能力の1つに「データサイエンティスト」のようなデータ解析力がある。DXはさまざまなデータを結びつけていくが、結びついたデータが何を物語っているのか、経営課題にどう落とし込めるのかを読み解けないのでは全く意味がない。
結びついたビッグデータの中から有益な予測を見出すには、幅広い知識や、いろいろな角度からデータを見る視点が必要となる。実務経験がある人ならではの気づきも多い。既存の戦力がリスキリングでデータを読み解く力をつけたなら、組織の底上げとなる。
とはいえ、リスキリングのプログラムを各企業が個別に用意し、実施することはコスト面からしても困難である。DXがかなりの数の人々に仕事を変わることを迫る以上、政府主導で基盤を作るしかないだろう。その上で企業間の協力を進め、官民連携によってコストの引き下げや受け入れ規模の拡大を図ることである。
いまや国際間競争に臨むにはDXは必須であり、そこで確実に成果を上げるしか日本の勝ち目はない。若い人が減っていく以上、状況の変化に柔軟に対応できる人材を育成していくことは避けられない。DXの基盤の整備と同時に、リスキリングの成否が日本の浮沈のカギを握っているのである。
https://news.yahoo.co.jp/articles/5805d47e55465e320beeff630b429047c825be1e
■関連ニュース
2030年に不足する79万人のIT人材は、 技術者・専門家だけとは限らない DX推進に欠かせない「3種の人財」の重要性
https://logmi.jp/business/articles/330138