急降下するEVメーカーの株価
「第2のテスラ」の米EVメーカーも撃沈…EV需要が欧米で停滞する理由

米EVメーカーの大苦戦

「第2のテスラ」として注目を集めてきた米EVメーカーのリビアン・オートモーティブやルーシッド・グループ。テスラのライバルと言われてきた両社は明確な特徴を打ち出し、リビアンはSUVやピックアップトラック、ルシアンはラグジュアリーEVに特化してきた。

2021年に上場したリビアンの時価総額は一時フォードやゼネラルモーターズより高かったが、株価が低迷するテスラと同様、ここにきて不調が目立つ。

米メディア「ブルームバーグ」によると、テスラは2023年10月、EVの需要が停滞していることを明らかにしてから、株価が下がり続けている。同社は2023年初めから値下げを徐々に続けた結果、利益率は1年間で27.9%から16.3%に大幅に下がった。

テスラより事業規模がはるかに小さいリビアンにも、ルーシッドにも値下げをする余裕はない。2024年の生産台数が前年とほぼ同数になると発表した両社の株価は現在、2023年夏と比較して半分以下と、悲惨なまでに低下した。それを受け、リビアンは約10%の従業員の解雇を発表している。

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EVはまだ早すぎたのか

EVの世界販売台数は2021年以降急増したが、2023年にはその成長幅が鈍化している。ブルームバーグの別の記事によると、それは欧米でEVの需要が伸び悩んでいるためだ。中国では政府の補助金によってEV価格が下げられているため、その成長に陰りは見えない。ブルームバーグNEFは、2024年もEVの増加率がさらに鈍化すると予想している。

現在、欧米ではEVの価格は同等レベルのガソリン車より30%ほど高い。しかも欧州では、そのギャップを埋めてきた多くの減税措置や補助金が終了しようとしている。米国でも補助金の対象となるEVは国産車だけで、現時点では選択肢がそれほど多いわけではない。さらに欧米では金利が高止まりしているため、消費者はローンを組むのに消極的になりがちだ。

一方、EVはまだ完成されたものではなく、バッテリーの性能や走行距離も今後向上する見込みだ。その発展を待ってから購入しようと考える消費者も少なくない。地域によっては充電インフラも不充分で、積極的に購入しにくい場合もある。

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つなぎのハイブリッド車へ再び注目

2023年に代わりに特に米国で販売台数が増えたのは、価格がEVより低いハイブリッド車だ。英紙「フィナンシャル・タイムズ」によると、トヨタは2023年に前年比で約100万台増の340万台のハイブリッド車を売り上げた。フォードも、2024年のハイブリッド車販売台数が40%増えると予想する。

一方、今後、米国の自動車メーカーがEVの価格を下げれば、需要が再び急成長する可能性は充分あると、証券会社UBSの自動車アナリストであるティム・ブッシュは指摘する。「現在の問題は、ビッグスリーの自動車メーカーが利幅を守るため、EVの生産を制限していることでしょう」

今後、さらなる技術革新も加わってEV価格が下がれば、その入手はより容易になり、需要は高まる。ハイブリッド車はそれまで市場から求められ続けるだろう。その転換にはまだ時間がかかるが、それまでにどれほどのEVメーカーが生き残れるかは定かではない。

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