
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/28a27d9c53f2ee922900938120ba87ca276ebf70
新型コロナ「フェイクニュース禁止法」でメディアを黙らせる
新型コロナウイルスをめぐるデマの「禁止法」などを使い政府に批判的なメディアに圧力をかける――そんな事例がすでに世界で400件以上にのぼる
メディアの国際組織「国際新聞編集者協会(IPIウィーン)」がその実態が明らかにしている
これまでにも各国で「フェイクニュース禁止法」が制定される動きがあったが新型コロナの感染拡大以後コロナ対策を名目とした新たな法規制が相次いだ
そして強権的な政府は新型コロナ対策の不手際を指摘するメディアやジャーナリストに対しそれを「フェイクニュース拡散」だとして「禁止法」を盾に摘発を行う
エジプトでは「三密」状態が放置された拘置所で「禁止法違反」とされたベテランジャーナリストが新型コロナに感染し死亡する事例も判明した
国連や世界保健機関(WHO)などは9月23日加盟国に新型コロナに関するデマなどの誤情報対策を呼びかける共同声明を発表している
その一方で「新型コロナにより(メディアに)新たな弾圧が加わっている」と元国連「表現の自由」特別報告者のデビッド・ケイ氏は述べている
●逮捕後コロナで死亡
NPO「ジャーナリスト保護委員会(CPJニューヨーク)」などによるとエジプト人ベテランジャーナリストモハメド・ムーニア氏が逮捕されたのは6月15日
「テログループへの参加フェイクニュース拡散ソーシャルメディア悪用」などの容疑がかけられていたという
ムーニア氏は逮捕の前日カタールのメディアアルジャジーラに掲載されたコラムやその前月のインタビューでシーシ政権の新型コロナ対応を批判していた
エジプトでは2015年に制定された反テロリズム法によって「フェイクニュース」を理由としたジャーナリストの摘発事例が相次いできた
2018年にはこれに加えてさらに新法が成立5,000人以上のフォロワーを持つソーシャルメディアユーザーもメディアとして扱い「フェイクニュース拡散」にはアクセス遮断や罰金が科されることになった
CPJによれば逮捕されたムーニア氏は65歳で糖尿病高血圧心臓病などの既往症があったという
そしてムーニア氏は拘留中に新型コロナに感染逮捕から17日後の7月2日に釈放されたが同月13日に新型コロナの合併症で死亡した
エジプトでは2月の新型コロナの感染者確認以来メディア規制を強化同国の司法当局は3月新型コロナに関する「フェイクニュース」拡散が収監5年以下罰金2万エジプト・ポンド(約13万円)以下の可能性があるとの声明を出している
AP通信のまとめによると2月から7月初めまでの段階で少なくとも6人のジャーナリスト10人の医師が逮捕されているというまたその後もジャーナリストの逮捕が続いている
●相次ぐコロナ新法の制定
加盟国がインフォデミックに取り組むためのアクションプランを策定し実践することを要請する科学とエビデンスに基づいた正確な情報をすべてのコミュニティ特にハイリスクのグループに適切に普及させることを後押しすることさらに誤情報虚偽情報の拡散を防ぎ排除していくことそして表現の自由は損なわないこと
国連や世界保健機関(WHO)国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)など9団体は9月23日加盟国に新型コロナに関するデマなどの誤情報対策を呼びかける共同声明を発表した
新型コロナの感染拡大とあわせて真偽入り混じった情報洪水「インフォデミック」が深刻化対策の必要性が指摘されてきた
ただその一方で強権的な政府が新型コロナ対策として「フェイクニュース禁止法」を制定する事例も続いた
ハンガリーでは3月に成立した新型コロナの対策法によって強権で知られるオルバン政権がさらに幅広い権限を掌握さらに新型コロナの「フェイクニュース」拡散に5年以下の収監を科すとした
ロシアのプーチン政権も3月末に成立した刑法改正でやはり新型コロナなどの「フェイクニュース」拡散に2万5,000ドル(約260万円)以下の罰金と5年以下の収監の罰則を設けメディアの場合には罰金は12万7,000ドル(約1,340万円)以下とされた
ルーマニアのヨハニス政権でも3月半ばに出された緊急事態宣言の大統領令で政府当局が新型コロナに関する「フェイクニュース」を拡散するメディアへのアクセス遮断ができるとされた
アルジェリアのテブン政権も新型コロナを受けて4月に刑法を改正「フェイクニュース」拡散に対し罰則として2〜5年の収監10万〜50万ディナール(約8万〜40万円)の罰金を設けた
アジアでも同様の動きはあった
タイでは軍出身のプラユット首相が率いる政権が3月に非常事態令を出し「フェイクニュース」の共有を禁止罰則は2年以下の収監とした